谷 晃生(湘南ベルマーレ)
ゴールキーパーは豊富な経験が必要なポジションだと言われる。確かにチームの最後尾に数多の修羅場をくぐり抜けてきた海千山千がどっしりと構えていれば、チームメイトは安心感を覚えるだろう。だからなのか、今年6月の代表戦シリーズには川島永嗣(39歳)、権田修一(33歳)、シュミット・ダニエル(30歳)と、全員30代の守護神が選ばれた。
ただしW杯の最終メンバーには、少なくともひとりは将来性のある若手が含まれるべきだと思う。世界最高の舞台で得られる経験は、先の長い選手にこそ、より大きな意味をもたらすはずであり、長期的にも有意義なものとなるだろう。
森保監督もそう考えていたのか、逆に7月のE-1選手権には鈴木彩艶(20歳)、大迫敬介(23歳)、谷晃生(21歳)を招集した。そしてこの順番に出場機会を与え、最後の韓国戦で代表初キャップを刻んだ谷は、デビュー戦を無失点で終えて3-0の勝利と優勝に寄与している。
「負けられない試合でしたし、大会全体の結果にも直接関与する試合でした。全員が良い準備をして、良いプレーをして、良い結果に繋がりました」と谷は最近の湘南の練習後に話した。
昨年の東京五輪では全試合にフル出場し、4位となったチームを支えた。だが本人は延長戦の末に敗れた準決勝のスペイン戦を、「サッカー人生で一番悔しかった試合」に挙げている。そしてクラブに戻ってきてからは、心身ともに「苦しい」日々を送っていたと明かす。昨季は最後まで残留争いに巻き込まれ、今季は大量失点を喫した試合も何度かある。
それでもおそらく、森保監督の評価はさほど変わっていないと思える。東京五輪で全幅の信頼を置き、E-1選手権でも一番大事な試合で彼を起用した。A代表初出場の相手が韓国で、その永遠の宿敵に完勝を収めたのだから、信頼感が増したと考える方が自然だろう。
「今は守備範囲(を広くすること)に取り組んでいます」と話す谷は、現代のGKに求められていることも、しかと心得ている。また代表では「練習時間が少ないので、自分がチームメイトのことを知るために、コミュニケーションを取ることも大事」と言う。たとえベンチに置かれたとしても、チームの和を乱すようなことはないはずだ。
ミレニアム生まれの好青年がJリーグで復調し、カタール行きのチケットを掴めるといい。