「20年後、普通のおじさん、おばさんになってるよ」
石井さん自身も14歳の頃、中学受験やいじめが原因で不登校になった。当時は人生が終わったと思っていたという。その後、一冊の本と出合いフリースクールの存在を知り、思い切って訪れたことで人生が変わった。さまざまな理由で苦しんでいる当事者に、今、石井さんがかけたい言葉は何か。
「自分が不登校だったときに何と言われたかったのかはずっと探していて、しっくりきてはいないんですけど。同じような立場の人がいたら、あなたは20年後きっと、普通のおじさんになっているよと言いたいですね。10代のときってどうやって大人になるかわからない。いろんな思いを抱えながら生きてきて20年経って、不登校のせいなのかできないこともいっぱいありました。
でも気がつけば、一緒に暮らせてありがたいと思う人と出会えて結婚もできて。そういう人とも洗濯機のかけ方一つで言い合いになったりもします。喧嘩したけどパフェを食べに行って仲直りしたり。それって普通の人生だなって思うんです。辛いことも苦しいこともあるけど、捨てたもんじゃない。今絶望的だと思っている人には、普通のおじさん、おばさんになる人生が待ってる。それは信じてもらえたらうれしいですね」
不登校新聞では20年以上にわたり、当事者やその親、学校以外の居場所を提供する大人など1000人以上の声に耳を傾け、届けてきた。取材を続ける中で感じた環境の変化はあるのだろうか。
「不登校への認知度の高まりは感じていて、文科省は顕著に変わりました。2016年には、休みの必要性と学校外の学びの重要性を法律として認める教育機会確保法も成立し、『学校復帰させることだけが道ではない』と何度も通達しています。ただ、現場である学校が全然聞かないんですね。文科省と現場の感覚のズレがあります」