亜細亜大、内田前監督からのショートメール

もうひとつの甲子園ドラマ。今夏、“デビュー”を果たした雑草解説者の矜持_2
2017年、都市対抗野球でNTT東日本を優勝に導く
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現在は所属するNTT東日本のスポーツ推進室という部署に籍を置く。野球部から離れ、初めは何をしていいのかわからなかった。監督退任後、上司から「お前は在籍24年の中で23年も野球をしてきた。自分の強みを活かして会社に貢献しろ。何が出来るのか、自分で探せ」と言われた。

考えた末に行き着いたのは、日本のスポーツの裾野にある問題だった。今、中学や高校の部活動は指導者の不足という問題に直面している。とくにマイナー競技は深刻だ。野球でも、硬式野球は経済的に負担が大きいという理由で辞めてしまう子供がいる。そういう〝部活動難民〟を救おうというテーマでプロジェクトを立ち上げた。

NTT東日本は野球以外にもバドミントン、ボートなどもシンボルスポーツとして力を入れている。バドミントンには桃田賢斗というスター選手もいる。そこでNTTがネットワークビジネスという特性を活かして、環境に恵まれない地方の子供などを対象に、リモートでアカデミーを開講していけないか。

そんなプロジェクトの準備に多忙な毎日を過ごす中、久しぶりに自分の原点に帰れたのが甲子園の解説だった。ちなみに母校の亜細亜大OBからは初めてとなる甲子園解説者。公式発表されると、大学時代の恩師である内田俊雄前監督から突然連絡が来た。

「誇りだ。亜細亜初」

75歳の無骨な野球人から届いた不器用なショートメール。読んで涙が出た。すぐに「何よりも監督に褒めていただけたことが嬉しいです」と返信した。初解説の翌日、内田は朝6時に、飯塚と同期の井端弘和(元・巨人)に電話を掛け、「おい。見たか?」と興奮しながらあれこれ話していたという。

テレビで3試合、ラジオが2試合。担当試合を終え帰京すると、復習の意味で録画しておいた試合を観た。「ちょっと言葉が足りなかったかな」と反省もしている。担当者からは「好評だったんで、来年もスケジュールを空けておいてください」と言われている。

「僕は野球に育ててもらった人間なので、少しでも野球に恩返ししていきたい。そういう気持ちで、また呼んでいただけたら、喜んで行かせてもらうつもりです」と飯塚は笑った。


取材・文/矢崎良一 写真/共同通信社 shutterstock

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