鉄腕アトムのパチモンが⁉
アルミ弁当箱にあえてツッコミを入れるマツド・デラックスさん。だがどれも嫌味はなく、彼なりの愛情と愛着を感じます。
──続いては「巨人の星」。あれ、星飛雄馬のこのフォームは……アンダースローですか?
そう。これは大リーグボール3号の投球フォームなんですよ。大リーグボール3号はバットを避ける魔球なんですが、その代償として、飛雄馬の左腕は完全に壊れてしまうんです。
──ええーっ⁉ そんな恐ろしい魔球の投球フォームなんですか。
当時、これを見た子どもたちはどう思ったんでしょうね。これからお弁当を食べるのに、飛雄馬の最後の雄姿を見るわけですよ。それからこの「鉄腕アトム」なんかもすごいですよ。
──右はパチもんですか?
ねぇ。お尻は出てるし、ズボンだって、これじゃあ腹巻ですよ。
──これはヒドイ。なんでこんなものが……?
なぜだと思います? そもそもアルミ弁当箱って、いったい誰が買うものでしょう。
──使うのは子どもだけど、買うのはたぶん親御さんですよね。あっ!
そうなんです。たとえば、子どもが「ぼく、鉄腕アトムの弁当箱が欲しい」って言うとします。左のアルミ弁当箱が3000円で、右が1500円だとしたら、親はどっちを買うと思いますか?
──多くの家庭が右でしょうね。でも、その後、家では子供が「こんなのアトムじゃない!」って気づいて……
この両者を並べて、「こんな悲劇が起こってしまっただろうなぁ」と想像するのも、ちょっとおもしろかったりするんです。
それからもうひとつ。アルミ弁当箱をよく見てみると、どれも大きさが違うでしょう。たとえばこの二つ(写真下)。なぜだかわかりますか?
──うーん、なぜなんでしょう。
弁当箱を最初に使うのは幼稚園や保育園ですよね。その次に使う機会は中学生。その間の小学校は学校給食があるから、6年分の空白が生まれるんです。
──幼稚園児と中学生では、食べる量がぜんぜん違うからこんなにサイズが違うってことか!
あくまで想像ですけど(笑)。作っている会社に問い合わせても、当時の担当者は残っていないし、すでになくなっている会社も多いので、本当のところはわからないんですが。
──この世に何種類存在するのか誰も把握できていない、と。
そう。だから、アルミ弁当箱の世界って、他人から絶対にマウントを取られないんですよ。そもそもマーケットがなくて誰もわからないから(笑)。僕だって400個ぐらい集めてますけど、どこまで集めたら終わりなのかも想像がつかないですね。