「冷凍食品=安くて手抜き」の食品じゃない

――冷凍食品が楽しい食卓を演出してくれるということですね。こういった「高級冷凍食品」トレンドが生まれたのは、やはりコロナ禍がきっかけなのでしょうか。

現在のトレンドはコロナ禍によるおうち時間の需要も大きいと思いますが、「高級冷凍食品」というジャンルは昔からあったものなんですよ。百貨店の冷凍食品専門売り場は昭和20年代末あたりからあり、最初は冷凍魚を扱っていましたが、その後調理食品も増えてきました。そこでは1,000〜2,000円以上するものも売られていたんです。もちろん、スーパーが多店化して冷凍食品を取り扱うようになってからも、スーパーの売場の一部には1,000円台の商品も並んでいて、人気を博していました。

現在の「冷凍食品=安い」というイメージが定着したのは1980年代ごろ、お弁当用冷凍食品がブームになってからですね。そこから徐々に日本では「冷凍食品は安くていろいろ種類があり便利に使えるもの」という評価になってしまい、高級冷凍食品はぐっと少なくなりました。スーパーの値引き販売も“安いもの”というイメージ定着を加速させたと思います。高品質のイメージが低下して、百貨店からも姿を消しました(海外では多種多様な冷凍食品がずっと楽しまれています)。

――百貨店に冷凍食品専門売り場があっただなんて、知りませんでした……。

そもそも冷凍食品は「安くて手抜き」の食品ではありません。作りたてのおいしさを冷凍してその時間を止め、空間を(場所を)超えて消費者に届けるすばらしいシステムです。

事実、先程のブレジュの2万円のコースセットも、元々は島根のおいしい食材を全国に広めたいという思いで作られたメニューです。

セットには「多伎イチジク」という品種のイチジクを使ったマリネがあります。大変美味しい品種ですが傷みやすく、遠方への出荷が難しい。しかし冷凍というシステムを使えば、誰でも、どこでも食べることができます。

ペアで2万円のフルコースも。高級冷凍食品の凄すぎるラインナップ_4
鰯と多伎イチジクのマリネ(画像/ブレジュ)

お取り寄せという買い物のスタイルや「おうち時間」が当たり前になった令和においては、これからどんどん冷凍食品の認識や価値は変わっていくと思いますね。