映画の世界を作りたい。CGアーティストが世界のスキャンを始めた理由

話を聞かせてくれたのは、ワールドスキャンプロジェクトCTOの市川泰雅(いちかわ・やすまさ)氏。ドローンを用いて世界各地の史跡をスキャンし、3Dデータとしてのアーカイブや研究開発への活用などに取り組んでおり、今も世界を巡って調査を続けている。

自宅から世界一周も夢じゃない! 世界を3Dデータ化するワールドスキャンプロジェクト_03

市川氏はもともと大学でCGやVFXを学び、フリーのアーティストとして活動していた。スキャン技術に興味を持ったのは、高精度な3Dデータを映画に使いたいという関心から。個人でドローンを使った3Dスキャンに取り組むなかで、ワールドスキャンプロジェクトを立ち上げた上瀧良平CEOと出会い、会社に参画。考古学者や海洋学者、各国の政府やNGO団体等と繋がり、世界各地でスキャンに取り組んでいった。

「ドローンは人が入れないところでも操作できるので、切り立った崖や海底などでも、安全に形状を取得できます。写真や動画よりも多くの情報を含んだ膨大な3Dデータを適切に解析することで、例えばピラミッドの建造工法など、未知の情報も明らかにできるかもしれません」

自宅から世界一周も夢じゃない! 世界を3Dデータ化するワールドスキャンプロジェクト_04

「3Dスキャンは非破壊で行えるのも特徴です。2019年に火災に見舞われたノートルダム大聖堂では、3Dデータが復元に生かされたという事例もあり、アーカイブとして後世に残すことにも大きな価値があります。実際、最近マチュピチュの遺跡を3Dスキャンしたのですが、その後に一部が崩落してしまったため、このデータは2度と取得できない貴重なものになりました」