私たちの大事なゆめパをちゃんと世の中に伝えてくださいと託された

子どもが安心して冒険できる居場所とは。『ゆめパの時間』重江良樹監督インタビュー【川崎市子ども夢パークに3年間密着】_14

──後半は学校に行かず、ゆめパのフリースペースで過ごしている4人の子どもの日常にフォーカスされているのですが、彼らは顔を出して、自分の現状や今の感情をきちんと話をしていて、それを映画を通して多くの観客に伝えることは勇気のいることだと思うんですね。もちろん、映画化に際して、親御さんの了承もあって出演を許可されたと思うのですが。

「彼らが出演を了承してくれたのは、『私たちの大切なゆめパをちゃんと世の中に伝えてくださいね』っていう思いからで、本人たちと保護者の方にほぼほぼ今の形に近い状態の作品を一度、試写会で見てもらったときに、その言葉を投げかけられたんです。まだちっちゃい小学生の子らは、『なんかいつもどうりの風景やな』みたいな感じでしたけど、もうちょっと上の子たちが『ゆめパのことをちゃんと伝えてくださいね』と言ってくれたことは、すごい嬉しかったですよね。本当に優しさの塊だと思いました」

──もし、彼らが映画を見て、これは観客に見せたくないと言ったら、そのシーンはカットして、また構成を変える可能性もあったんですか?

「もちろんそれが大前提ですね。出ている人の意見を尊重してこその作品で、出てくれたみなさんがこれでいいと後押ししてくださって、応援されるから、あとはどれだけ多くの観客の人にこの作品を観てもらえるかっていうのが僕の責任になるので。一生懸命広げていかないと」

ドキュメンタリーに映っている子どもの姿は人生の一部分。映画後の子どもの人生にも責任があるから、自主上映の形をとっている

子どもが安心して冒険できる居場所とは。『ゆめパの時間』重江良樹監督インタビュー【川崎市子ども夢パークに3年間密着】_15

──ひとつ聞きたいのは、前作の『さとがにきたらええやん』は高い評価を得て、ヒットもしましたが、円盤化せず、自主上映で貸し出しという形をとられていますよね。この『ゆめパのじかん』も劇場公開をした後、10月から自主上映で作品を貸し出しますとホームページに書いてあるのですが、この形をとっていらっしゃるのは、やっぱり映画館で体感してほしいから?

「それもあります。スクリーンで観てほしい。みんなで観てほしい。上映会だと色んな交流が生まれたりもするんで、いい意味で、僕の映画を地域の中で利用して欲しいという思いもあります。『さとにきたらええやん』もすでに上映が始まっているこの『ゆめパのじかん』も本当に好きでいてくれる人も多いので、コレクションとして手元に置いておきたいという気持ちはすごくわかるんですけど、何年か経った後、中古店の棚に並んでいたりしたら、ちょっと悲しい気持ちになるじゃないですか(笑)。

昨今、オンライン上映へのリクエストが増えていて、必要があればやっていいかもしれないけれど、今のところは自主上映で観て頂くのがいいかなと。映画の上映会って、自分で心して行かないとだめじゃないですか。日にちを決めて、時間調整して、わざわざ足を運んでみんなと観る。それって素晴らしいことだなと思っていて。

もうひとつは、ドキュメンタリーに映っている子どもの姿って成長過程におけるひとつの通過点で、僕は彼らの映画後の人生に対しての責任もある。撮影しているときはOKだったけど、しばらくしたら、『今はこういう自分をみんなに見てもらうのはいやだ』と言われるかもしれない。その時、ソフトが世の中に出回っていたら、もうどうしようもないんで。その意味で、彼らが成人して見返した時、ソフト化していいか、ひとつの判断材料になるでしょうね。僕が映画を撮っていて一番大事にしているのは、なるべく相手を傷つけないように撮影すること。それは公開されてからもそうです。僕はずっと付き合っていける人を撮っていきたいなという思いがあるんで。

今回は、僕は大阪の人間だから川崎まで距離があるんですけど、久々にゆめパに行って会った時に、いつものようにだらだらと世間話というか、しょうもない話ができる関係であり続けてくれたらなあと思っているので。作品を撮るためにカメラを回して、作品が完成してじゃあさようならという関係性で、通過してしまうような人は撮れないと思っていますね」

──じゃあ、『さとにきたらええやん』の子どもたちとも未だに交流されているんですね?

「近所ですからね。みんな元気で過ごしていますよ」

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──不思議な感覚ですけど、映画を通して出会ったお子さんたちだけど、この後、何かの折に、彼らは元気かなって遠い親戚のように思い出しちゃうんです。多分、『ゆめパのじかん』に出てきた子どもたちもそうなると思います。

「それは本当に嬉しいことなんですね。出てくれている子どもたちを愛してくれてるっていうのは嬉しい。ありがとうございます」

──次も子どもの居場所についてカメラを回すつもりですか?

「うーん、何がいいですかね? ひとつ頭にあるのは、日本社会の中で外国ルーツの子どもが増えていて、そういう子どもに興味はあります。言葉の壁もあるし、ちゃんと居場所があるのかなと。その意味で、改めて学校と言う場にも興味がありますね」

──重江監督のそういう子どもに寄り添う姿勢の原点みたいなものは何ですか?

「別にないんですけどね。まあ、僕自身、思春期の時、しんどかったから、やっぱりそういう子が気になるんでしょうね。あとは、僕が通っていて楽しいって思えることが、ドキュメンタリーを撮る上で大事な要素ですよね。幾つか気になっている魅力的な場所や世の中に伝えるべき場所はあるんですけど、映画を撮るとなると、バチンと決めちゃわないといけない。

ゆめパは過ごしている時間はとても楽しかったんですけど、週2回、大阪から川崎までの深夜バスの通勤が超疲れたんで。もう何がつらかったですかって言われたら、移動の時間です。新たな場所で撮影を始めるとなると、ちょっとそういうことも考えてしまいますね(笑)」

『ゆめパのじかん』

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『さとにきたらええやん』の重江良樹監督が神奈川県川崎市の子どもたちの遊び場「川崎市子ども夢パーク」=通称「ゆめパ」に通い、子どもたちが安心して自分らしく過ごせる居場所がどう作られているのかを密着したドキュメンタリー。

監督・撮影:重江良樹

構成・プロデューサー:大澤 一生/編集:辻井 潔/音楽:児玉 奈央

制作協力:認定NPO法人フリースペースたまりば/撮影協力:川崎市、川崎市子ども夢パーク、公益財団法人 川崎市生涯学習財団、夢パーク支援委員会、ちいくれん(地域で子育てを考えよう連絡会)、風基建設株式会社

製作:ガーラフィルム、ノンデライコ  配給:ノンデライコ

2022/日本/90分/日本語/カラー/ドキュメンタリー

助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会 推薦:厚生労働省社会保障審議会

★上映館情報
ポレポレ東中野・川崎市アートセンター:8月19日(金)まで
シネマチュプキタバタ:9月1日(木)~20日(火)
横浜シネマジャック&ベティ:8月13日(土)~
あつぎのえいがかんkiki:8月27日(土)~9月9日(金)
シネコヤ:8月28日(日)まで
湯本駅前ミニシアターKuramoto:9月1日(木)~
いわきPIT:9月1日(木)~
フォーラム仙台:8月25日(木)まで
上田映劇:8月20日(土)~
第七藝術劇場:上映中
シアターシエマ:8月25日(木)まで
日田リベルテ:8月26日(火)まで
シネマ5:9月3日(土)~9日(金)
Denkikan:8月19日(金)~
宮崎キネマ館: 9月2日(金)~15日(木)

その他、全国順次公開
自主上映についての詳細はこちら

『ゆめパのじかん』公式サイト

©gara film/nondelaico

参考:
川崎市子どもの権利条例リーフレット・パンフレット
https://www.city.kawasaki.jp/450/page/0000081452.html
認定NPO法人たまりば https://www.tamariba.org/profile/
川崎市子ども夢パーク https://www.yumepark.net/

撮影/山崎ユミ

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