ウィズ・コロナ時代に失われた「余白」

従業員の働き方改革やDXの推進、さらに世界規模のコロナ禍や国際情勢の不安定化によって私たちのビジネスを取り巻く環境は急速に変化している。ビジネス機会の創出を目的とする見本市や展示会はオンライン化が進み、対面の営業や商談にもZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議ツールが普及した。

もちろん、こうしたデジタル化の進展によって仕事の効率が向上したビジネスパーソンもいるだろう。しかし、その一方で今までと異なるコミュニケーションのスタイルに馴染めず、営業成績の伸び悩みやストレスを感じている人もいるのではないだろうか。

オンラインでは、対面と比べて相手の時間を確保するのが難しくなっただけでなく、コミュニケーションにおける「余白」が大きく失われたと前田鎌利さんは指摘する。

「コロナ禍以前であれば、会議室に入った際やプレゼンの本題に入る前の雑談などでアイスブレイクが可能でした。しかしオンラインへと移行した今では、窓から見える光景や相手の持ち物など、ちょっとした情報を話の掴みとする会話術もうまく利用できません」

資料のタイトルは13文字以内が鉄則! ウィズ・コロナ時代の超プレゼン術_1
プレゼンテーションクリエイター/書家の前田鎌利さん。ソフトバンク在籍時代には孫正義社長(現会長)のプレゼン資料作りを担当。2013年12月に独立し、現在は株式会社固の代表取締役、一般社団法人プレゼンテーション協会の代表理事、一般社団法人継未の代表理事として活躍する

社外でのプレゼンや人前でのスピーチでは、「冒頭で相手の心を動かせるかどうか」が重要とよく言われる。特に、時間の制約が厳しくコミュニケーションの余白も少ないオンラインのプレゼンでは、これまで以上に短時間で相手の感情にアプローチする技術が求められると前田さんは言う。

「社内でのプレゼンと異なり、データや論理性だけでは人の心は動かせません。『この人の話なら聞いてみたい!』という好意や信頼感を勝ち取るための工夫が必要です。基本的に社外の人は、あなたのことに興味はありません。そのため、プレゼン開始30秒以内に興味を持ってもらえなければ、どんなに手の込んだプレゼン資料を作っても、相手の心は動かせないでしょう」

またオンラインのプレゼンでは、与えられた時間のうち商品やサービスの説明は極力短く濃縮することも重要だという。

「資料を使ったプレゼンは3分を目標にまとめ、なるべく質疑応答に時間をかけることを心がけてください。これはアドリブで対応するという意味ではなく、想定されるどのような質問に対してもその場で的確に答えられる準備が必要ということです。これができると、プレゼン以上にあなた自身の信頼を獲得しやすくなるでしょう。信頼が得られれば、たとえプレゼンした商品が売れなくても、次の機会につなげることができます」