ゴリラハウスでの寮母生活
以前、アメフト選手を対象としたシェアハウスの寮母さんをやっていることがテレビで取り上げられ、話題になったことがあるのだが、これにも裏話がある。
髙山は東京五輪に備えて、東京に拠点を持ちたいと考えていた。もしコロナ禍がなく順調に開催されていたら、ホテルは満杯で取るのが難しかったはず。そこで早い時期から1~2年の短期のつもりでマンションを抑えようと物件を探していた。その際、知人のボブスレーにも挑戦していたアメフト選手がシェアハウスの案内を出していたので、そこに乗っかることにした。
海外ではシェアハウスは男女共同もスタンダードなので、女子もいるものだと思っていたら、集まってきたのはマッチョなアメフト選手のみ。なかには、母親が「あの髙山さんがやるなら間違いない」と送り出した選手もいた。
髙山曰く「ゴリラハウス」。選手たちからは「姐さん」と呼ばれ、「毎日、筋肉に囲まれて幸せでした」と笑う。料理は好きで得意だった。彼らに食事を作り、自分自身が選手時代に得た知識で食育的な指導も行った。選手たちの恋愛相談にも付き合った。
「いろんな世界を見たいじゃないですか。みんながチャンスを落としていくから、私はそれを拾い上げて自分でやる。それが楽しいです。ソフトボールにこだわってずっとやっていたら、ソフトボールの仲間しかいなかったはずです。冬の競技に行った時、それはつまんないと思ったんです。
冬の競技の友達が増えて、それが枝分かれして、友達の友達みたいにまた違う競技に繋がっていく。その広がっていくのが楽しんですよ」
尽きることのない好奇心と、様々な競技や活動への情熱。その原動力はどこにあるのだろう?
「今も車椅子ソフトで選手と関わっていて、『選手っていいなぁ』って思っちゃうんですよね。頑張っている選手たちのそばにいると、『この人たちがこんなに頑張ってるのに、私は何やってんだろうな』って思ってやりたくなっちゃう。だから突き詰められなくても、なにも得なことはなくても、とにかく選手でやっていたい。
私がやることで、ナチュラルリュージュも車椅子ソフトも、こういう種目があるんだな、女子でもやれるんだな、障がい者でも出来るのか、って思ってくれたらいいのかなと思っています」
〝女大魔神〟は、今も「現役」であり「トップランナー」だ。
取材・文/矢崎良一 写真提供/髙山樹里 樫本ゆき 矢崎良一