日本車椅子ソフトボール協会長に

しかし、問題は山積だ。まず、車椅子を走行させるため、フィールドはアスファルト(コンクリート)の上でなくてはならない。なので、もっぱら試合会場はアウトレットモールのような広い駐車場に、路面にビニールテープを貼ってダイヤモンドを作り、外野にフェンスを張って手作りで試合場を作る。

アメリカではメジャーリーグのヤンキースやレッドソックスがフランチャイズ地域のチームをバックアップしていて、選手たちは、ヤンキースやレッドソックスと同じユニフォームを着てプレーしている。さすがに日本では、まだそこまでのバックアップはない。

それでも埼玉西武ライオンズが大会を主催したり、北海道日本ハムも協力的だ。髙山が創設し、今も所属するチーム(東海ユナイテッドドラゴンズ)は愛知にあるため、中日ドラゴンズがユニフォームを提供してくれている。阪神の糸井嘉男のように、大会に足を運んで普及活動を行ったり、個人で応援してくれる選手もいる。

2013年には日本でも協会が発足。現在は国内14都道府県で22チームが活動している。当面の目標は、47都道府県全部にチームが出来るよう、髙山も地方に行っては体験会を開くなどして、各自治体に働きかけている。昨年は沖縄に初めてチームが立ち上がり、大会に参加した。

「そうやって国内で動いていって、見てもらって、知ってもらって、根付いていったらいいと思っています。それを後ろから支えていくのが私の仕事ですね」

4年前にファンの男性と豪快婚。“女大魔神”髙山樹里(45)が、日本車椅子ソフトボール協会会長になっていた_2

2028年パラリンピックはロサンゼルスでの大会だけに、ここが採用のチャンスでもある。とはいえ、まだ世界的に普及していないので、パラリンピックの正式種目になるには、もう少し時間が必要なようだ。コロナ禍がなければ、普及のためにヨーロッパにも行くつもりもある。

古巣のソフトボールとの縁は少しずつ薄くなっているが、オリンピックを共に戦った宇津木妙子元監督とのパイプは太い。大阪のコートのオープンの際には、宇津木がオリンピアンを何人も引き連れてイベントに参加してくれた。

「私も宇津木さんがソフトボールのイベントで『やるから来い』と言われたものはお手伝いします。宇津木さんはソフトボールだけじゃなく、障がい者スポーツにも理解を持って支援してくださっているので」

いつの間にか押し上げられ、役職が付き、日本車椅子ソフトボール協会会長となった。「大変ですよ、責任だけ背負わされて。面倒臭いだけです」と言う。