行動を分析して、必要なモノを導き出す
––では、デジタルのメモは全然使ってないんでしょうか。
メモに関しては使わなくなりましたね。メモとスケジュールがリンクするといったシステムも、まず使い方を覚えなければいけないのが煩雑だし、スマホにデフォルトで入っているメモ機能も情報整理がしづらいですよね。「とにかく身軽になりたい、シンプルにしたい」と考えたら、「ポスト・イット」に行き着きました。
––大のデジタルガジェット好きだったハイロックさんがアナログ回帰したのには、何か理由があったのですか。
テクノロジーの進展がiPhone以降、少々鈍化していますよね。ガジェット類もスマートフォン以上に革新的な製品が出てきていないじゃないですか。IoT製品なども新鮮味が薄れて、僕にとって同じことの繰り返しに見えてきたんです。
以前は近未来的なものがカッコよくて、最先端のアイテムをたくさん収集していました。ITで今までできなかったことができるようになること、それ自体にワクワクしていて。「より新しいものが欲しい」と未来に向かって夢中で走っていたような感覚だったんですよ。
それが群馬に戻ってきたあたりから、もっと自然に触れたり、日常の時間を大事にしたりということのほうがおもしろくなってきて。今は、むしろ過去のもの、アナログなものに心が惹かれるようになりました。
––このデスクも、少しレトロな雰囲気ですね。
これ、カッターマットを天板に敷いているんです。子どもの頃、勉強机とかでよく使ってましたよね。
––言われてみれば! このザラッとした質感、懐かしいです。
自分の世代特有かも知れないけれど、カッターマットを使ってモノづくりをしている人って、手先が器用なイメージありません? 僕の師匠であるNIGOさんも使ってたんですよね。
––工作心が刺激されますね。
これはオリジナルで30枚作って20枚販売したんですよ。そうしたら、すぐに売り切れて。やっぱり机全体をカッターマットにしたいという欲求を持っている人は一定数いるとわかりました(笑)。クリスマスシーズンにはこのマットの白、黒、透明バージョンを販売する予定です。ペン立てもカッターマットも、自分の普段の行動から導き出したモノ選びなので、愛用しています。
––「行動から導き出したモノ選び」というと?
僕は、デザイン性だけでモノを選んでいるわけではありません。デスクを覆うカッターマットを思いついたきっかけは、イチイチしまったり出したりするのが面倒だったから。じゃあ敷きっぱなしにすればいい、敷きっぱなしで使いやすいのは机の天板にピッタリのサイズだ、という考え方をしました。
先ほどのペンは、普段からアイデアをメモする機会が多かったから。アイデアってすごく儚いものですよね。頭に浮かんだ瞬間にメモしないと消えてしまう。思いついたときにすぐ書くために、机の上にペンを設置する環境をつくろう。そう考えて、このタイプのペン立てが一番いいと判断しました。