見どころ2:アリスからインスピレーションを受けた現代の作家たち
1865年に誕生した「不思議の国のアリス」は、現代までの間に多様なジャンルのアーティストに影響を与えてきた。日本では明治時代にアリスの翻訳が始まり、1970年代にはアリスブームが巻き起こったそう。
そんな「アリスからインスピレーションを受けた」アーティストたちの作品が一堂に会しているのも注目したいポイントの一つだ。
ヒグチユウコや草間彌生といった現代の日本のアート界を牽引する作家、ヴィヴィアン・ウエストウッドやヴィクター・アンド・ロルフら多くのファッションデザイナーの心を射止めたアリス。
従来の勧善懲悪を良しとする物語の構図に縛られない、受け手の自由な想像を掻き立てるキャラクターとストーリーが、新進気鋭のアーティストたちの発想を刺激したのかもしれない。
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』は道徳的な解釈を含まない最初の児童文学の一つと呼ばれている。確かに人間の言葉を話す動物たちや、口にすると体のサイズが変わる食べ物や飲み物、そして夢と現実が交錯するかのようなラストは独特だ。初めて読んだ時、困惑したという人もいることだろう。
アリスは好奇心旺盛で、ときに人のアドバイスよりも自分の心の声を優先してしまう。
このような何事にも臆しない勇敢なアリスの精神は、政治運動や社会運動を行う現代人に受け継がれているのだとか。アリスという作品の自由な解釈を受け入れる姿勢が垣間見える展示内容に思わず胸を打たれた。