「同じものでできてても、まったく違うものってあるだろ」

松岡茉優が演じる生活安全課の刑事である摘木星砂。パーマにスカジャン姿、乱暴な口調がトレードマークの彼女は、どうやら二重人格(解離性同一性障害)のよう。買った覚えのない靴を自室のクローゼットへ入れている様子、風呂場や街中の階段で眠り込む様子など、そう察せられるシーンがある。

7月30日に放送された第3話は、まさに星砂回とも呼べる内容だった。彼女を主軸とするスーパー万引き事件を紐解きながら、二重人格とされる真相にも迫っていく。

特に印象的だったのは、星砂と悠日が居酒屋で話すシーン(この2人は食事をともにするシーンが多い)。トマトが嫌いだと見受けられる星砂に対し、トマトソースとどう違うのか問いかける悠日。星砂はこう返す。

「同じものでできてても、まったく違うものってあるだろ」

これに対して「肉じゃがと、コロッケとかですか?」と応じた悠日。このやりとりは、星砂のなかにもうひとつの人格がいることを示唆するものだった。その後、元監察医とみられる小洗杏月(田中裕子)に「私の中に、肉じゃがとコロッケがいる」と、暗にそれを示そうとする星砂の描写も見られた。

彼女はいつから二重人格になったのか? これは、このドラマの今後の展開の軸となり得るポイントの1つ。どうやら星砂は、朝陽の死にもなんらかの形で関わっていそうだからだ。

彼女の自宅にある朝陽のスマホ。その事実にまつわる記憶がないことから、おそらく彼女のなかのもうひとつの人格が深く関係している可能性がある。鹿浜や悠日自身に朝陽殺しの疑いがかかるなか、星砂はどのように絡んでくるのだろうか。

また、そんな構図のなかで、小鳥の立ち位置だけが定まりきっていないようにも見えてくるこのドラマ。「小洒落てこじれたミステリアスコメディー」と謳う同ドラマのこじれ具合がどんな着地点を見出すのか。そのヒントはすでに提示されている。

文/北村有