終戦は決まっていても空襲が…
八月十四日、羽生の家に戻った私は、父に敗戦のことを話したが、父は「そうか」と一言、言ったきりだった。父は、口には出さなかったが、そのことを予想していたのだと思った。
でも、もうひとつ、思いがけないことが起こった。その夜の熊谷の空襲だ。私の町、羽生の上をB29爆撃機の大編隊が通っていったのだ。
「何故、今夜、空襲をするの? 終戦と判っているのに、何故なの? 何故こんなことをするの?」
私は怒りで一睡もできなかった。熊谷には、私の学校時代の友達もたくさん住んでいる。私はそのことが気がかりで、自分の膝小僧を抱え、震えていた。
八月十五日の朝、あの日は空が真っ青で、ギラギラと照りつける太陽が暑かった。人声が聞こえず、蝉の声だけが聞こえた。そして私は、心も体も全く空っぽだった。