積み重ねる対話の中にこそ、未来がある
――そういう話をされたときの中高生の反応はどうですか。
「やっぱり中高生だと大人みたいにその場でリアクションをくれる子は多くはないです。でもあとで、instagramのDMで『れいかさんの話を聞いて、自分も夢を諦めなくていいんだって思いました』とかコメントくれる子がいるので、その場ではそっけなくても、ちゃんと何か持ち帰ってくれているんだなっていうのはあるかなと思います。ずっとつながっていて、進路の連絡をくれるとすごく嬉しいです」
――田中さんのようにモデルを目指す子もいますか。
「多いかもしれないですね。私もまだ勉強中なので断定するのは難しいのですが、自分自身の経験でいうと、小さなときから施設にいると、親が自分に寄り添ってくれた時期をなくしている場合が多い。そうすると、自分自身が誰かに認められた経験、何をしても守ってもらえる経験とか、そういう体験がなくなっちゃう。それがないまま大きくなっていくと、誰かに認めてもらいたい、見てもらいたいっていう、まあ、わかりやすく言うと承認欲求が大きくなっていくということがあるのかなと。私も今振り返るとそうなんですが(笑)、モデルという仕事を通して誰かに見てほしかったり、認めてもらいたかったりしたかったんだと思います。多分他の子もそういう思いが根底にあるのかもと思ったりしています」
――自分の体験を通して、話すことで話したり書いたりすることで、理解を広めていく活動されていますが、その中で思うことはありますか。
「もっとこうしたらいいんじゃないって会話が積み重なっていく人が増えたらいいなと、この先の未来として思っています」
「インタビューやイベントとかに出ると、当事者の言っていることが答えだみたいな雰囲気がすごくあります。でも、私の発言とか経験が全てじゃないですし、正解でもない。なのにあたかも私以外の当事者も同じみたいな理解をして終わっちゃう。それはなんかちょっと違うかな。もうちょっと突っ込んだ話だとか、会話の回数が増えたらいいな」
――なぜ、会話が積み重なることが必要なんでしょうか。
「他の当事者の子たちのためにもです。そうすることでもっと双方の会話とか、理解ができる社会になっていくと思います。児童養護施設や社会的養護について社会の理解が進む風土を作っていく中で、そこに会話がないと、風土って醸成されないと思うんですよ。でも今の段階で私が何か言ったら、『はい、わかりました』とか『質問ありません』とかよくあるので……相手の意見や感想も聞きたいのに、会話が一方通行で悲しいなと。理解したいって思っているのに、 その次の1歩がまた踏み込みにくいのかなと思ったりする。相手の方がもつと深く理解したいとか、疑問があっても、まだ遠慮があって、一歩踏み込めないのかもしれません。たなかその分、学生さんとか、話していてすごくどうでもいい質問とかも来るので(笑)、それぐらいフラットな感じがいい。私以外の当事者でも非当事者でも、お互いが意見を交換できる関係が増えたらいいな」
取材・文/神田憲行 撮影/菊地健志 撮影協力/福音寮