世相を映す言葉を生むマンガ家の仕事
今回、このほかにも飯間さんはさまざまなマンガ発の言葉を教えてくれた。
「今回は辞書に載っている言葉を中心に選びましたが、新語・流行語レベルまでいれたらマンガ・アニメが起源の言葉はもっとたくさんありますよ」と飯間さん。「目が点」「オラオラ」「ショタコン」「だめんず」など、確かにざっと聞く限りでもここでは紹介しきれないほどあるようだ。
それにしても、これほどまでにマンガ家が新しい言葉を次々と生み出しているのには、どんな理由があるのだろうか?
「おそらくどのマンガ家も『この言葉を流行らせよう』と思って言葉を作っているわけではないと思います。もちろんマンガを盛り上げるためにインパクトのある言葉を考えよう、とは思っているかもしれません。しかし、それが流行して世相や時代を表すワードになるには、いろんな要素が絡んできます。
そのときの社会情勢と人々の思っていることにうまく合致したフレーズが出てくると、世の中に広く浸透していく言葉になる。偶然に左右される部分も大きいけれど、結果として、時代の雰囲気をはっきり映し出しているところが面白いですね」
「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉があるように、マンガもまた世の中のあり方に影響を受け、また世の中に影響を与えていく。マンガ家自身もまた、社会情勢や世間の人々のムードを敏感に察知しているはずだ。
結果的には偶然の産物かもしれないが、そんなマンガ家だからこそ、時に世の中の誰もが使いたくなる言葉を生み出せるのかもしれない。
取材・文/山本大樹