自身の肖像画ジャケットという衝撃

新作のシンボルたる肖像画ジャケットも確信犯的だ。かつて達郎氏は、ポップ・アートを用いた『GO AHEAD!』で大きく自分のメンを晒し、物議を醸したことがあった。

でも今回は、それを超えるインパクトがある。CDでは小振りに感じるが、30cm四方のアナログ・レコードではサスガの風格。ザラついたジャケットの紙質も、キャンバスのような味わいがある。これは己の信念をアートで表現したものなのだ。

描いたのは、『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家ヤマザキマリ。彼女は元々画家を志望し、フィレンツェの美術大学で油絵を学んだ経歴の持ち主で、イタリア・ルネサンス期の肖像画を勉強していたそうである。

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『SOFTLY』アナログ盤を見開いたところとインサート(歌詞カード)。クマのイラストが入っているのは、昔の達郎氏のニックネームだから
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一方の達郎氏は、幼い頃からファインアートへの憧れがあり、いつかは自分の肖像画を描いてもらいたい、と考えていたらしい。

「遺影みたい」なんて雑言も耳にするけれど、次のオリジナル作までまた10年空いたら、氏はもう80歳。悲しいけれど、“やれるうちに後悔のないよう…”という秘めた想いがあっても不思議ではない。

ライヴ・アルバムのリリースや次なる新曲も期待される。でも外野が何を言おうと、山下達郎は自分が納得したことしかやらないだろう。

『SOFTLY』が将来、彼のキャリアの中でどのようなポジションに位置付けられていくか、少し距離を置いて眺めている一人のファンとして、静かに見守りたいと思っている。

文・写真/金澤寿和