「首位獲得は初週のみ」予想外の展開

あれだけ大量メディア露出を稼いでいた『SOFTLY』だったが、その後、アレレッ⁉という予想外の展開を見せる。チャートの頂点に立ったのは初登場1週のみ。2週目には早くもトップ3から脱落してしまったのだ。

そもそも首位獲得の達成もオリコン誌だけで、ライバル誌ビルボード・ジャパンのアルバム・チャートでは、Stray Kids『CIRCUS』に阻まれて2位に甘んじた。やはり時代は「アイドル、強し」なのだろうか。

理由を分析してみよう。まず一般論として、チャート初登場第1位の裏側だが、これは要予約分を含む初回出荷数を反映させた結果。固定ファンの多さなど、アーティストの従来評価がそのまま順位に現れる。

だから「クリスマス・イヴ」のように、毎年その時期にシングルが出てチャート・インするほどの国民的ヒットを持つ達郎氏ならば、当然の成り行きに見える。

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シングル『クリスマス・イブ』(右)と、オリジナル収録アルバム『Melodies』(1983年)。『クリスマス・イブ』のシングルは毎年発売されていて、ギネスにも登録されているが、これは2013年に発売された30周年記念の12インチ・シングル盤

ここから数字を伸ばし、評価を上げていけるかどうかは、作品の内容や評価次第。アルバムの真価が問われるのは、実はココからなのだ。

それを考えると、『SOFTLY』には些か不安なところがある。多くの新曲を含んだ通常のニュー・アルバムなら、発売後にタイアップが決まったり、2枚目3枚目のシングルが切られたりするもの。

ところがこのアルバムは、前述したように既発曲を集成した面が大きいから、これから付加価値が生まれる余地は小さいと言わざるを得ない。