日本株は円安の恩恵を受ける産業が狙い目

――日本株に関してはいかがでしょうか? 投資するなら、どんな銘柄に注目すべきでしょうか?

日本株は、円安効果で持ちこたえているのだと見ています。ただドル建てで見ると、下げ方がNYダウと日経平均はほぼ同じなんですね。

しかしながら、昨年よりは少し日本株は底堅くなっている印象はあります。どこまでが円安の影響なのか、どこまでが構造的に日本株が強くなったのかは、現時点では不透明です。

自著『エブリシング・バブルの崩壊』にも、これからリスクの低い投資先として防衛関連株のバリュー株などが最適だと書きました。これらの株価は少しずつ上向いています。詳しくは、是非、本書を見てください。

目が離せない米国の利上げとリセッションの行方、日本株で有望な投資先は?_3
エミン・ユルマズ氏 撮影/堀田力丸
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また鉄鋼や造船などの日本の基盤産業は、ディフェンシブ銘柄であり、インフレには負けないですし、年間3%程度の配当が取れるような株式もあるので探してみましょう。

半導体関連産業については、昨年は完全にバブルテリトリーだったので、割高になっているものには注意してください自著では警鐘を鳴らしました。いまは少し落ち着いてきようですが、まだ一部には割高のものもあります。

円安の恩恵を受ける産業も狙い目でしょう。外国人の訪日が解禁されたことで、これからはインバウンドが急増するでしょうし、日本人は円安で海外が遠ざかる反面、日本国内を旅行する人は増える。その観点から鉄道、空運などへの株式投資は狙い目でしょう。

ただ、かつてのインバウンドのメインは中国の人たちでした。それが少し変わるのではないかと、中国通ジャーナリストが話していました。中国では一般人のパスポートの発行をかなり厳しく絞る政策が取られるようなのです。彼は「これは実質的な鎖国政策だ」と物騒な言葉を使っていましたが、ゼロコロナ政策の一環とも考えられます。

これからは、インバウンドよりも、大幅な円安で海外に行けなくなった日本人の需要に期待すべきでしょう。日本人による日本国内旅行の〝深掘り〟が始まるのです。なかでも目玉は沖縄かなと、個人的には思っています。

先般、大阪出張の折、道頓堀に出かけてみてびっくりしました。いつも込み合っている場所なのですが、今回はなんだかお祭りのような様相で、アーケード街の盛り上がりは半端ではなかった。とりわけ若い世代の人たちが多かったですね。

そんな光景を眺めながら、ここ2年間抑え込まれたうっぷんを晴らすかのように、外食産業を含めて国内消費が伸びる可能性があると感じました。

人間はいったんデフレマインドからインフレマインドに変わると、お金を貯めるよりも使いたくなるものです。なぜなら、インフレになると今日買ったモノが明日同じ値段で買えないかもしれないからです。ここまで円安が進んでくると、その影響は大きいはずです。

聞き手/加藤 鉱(作家・ジャーナリスト) 写真/shutterstock

エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ
目が離せない米国の利上げとリセッションの行方、日本株で有望な投資先は?_4
2022年3月25日発売
1,760円(税込)
四六判/256ページ
ISBN:978-4-08-786135-8
コロナ禍で空前の金融緩和が行われて3年。インフレ懸念、利上げの必要性を叫ばれてきたが、いよいよ2022年は、FRB(米国の連邦準備理事会)の方針大転換で、3月から利上げが始まり、世界経済のフェーズが変わる。
米国のインフレ率は、2022年1月で前年比8.6%に達し、食料や生活用品が値上げされているばかりか、賃金も上昇している。
しかし日本では、思うように賃金が上がらず、物価の上昇だけが先行する不況下のインフレ、すなわちスタグフレーションが懸念されている。
また米国が撤兵したアフガニスタンの混乱や、ウクライナへのロシア侵攻の懸念など、地政学リスクが増大することによって、原油や天然ガス、小麦などのコモディティ価格が上昇し、ますます世界のインフレに拍車をかける状況となった。
一方、世界経済の牽引車だった中国は、恒大集団の実質的な破綻など不動産バブルの崩壊がささやかれ、景気の後退が懸念されている。
こうした様々な世界経済のほころびが明らかになった2022年、上昇しすぎた世界の株式市場や不動産市場はどうなるのか? 
今後の世界経済はどのように展開していくのか?
すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。
さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。
投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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