4×400mチームの決勝進出に期待

「先行逃げ切り」の戦略をもとに、男子4×400mリレーチームはアメリカで合宿を重ねるなどして強化を図り、シレジア2021世界リレーでは2位という成果を生み出した。東京五輪では惜しくも決勝進出は逃したものの、日本タイ記録を29年ぶりに叩き出している。この時は、エースであるウォルシュ・ジュリアン選手(富士通所属)は怪我のためリレーは欠場していた。

「東京五輪でも決勝に残れる可能性は、あとコンマ数秒でした。良い状態で来ていますから、今回のオレゴン大会では決勝進出の可能性は大きいと思います」と竹井さんは言う。

では仮に決勝に残った場合、視聴者はレースのどこに注目すれば良いだろうか。

「やはりレース序盤が大切です。しかし、エースのジュリアン選手が第1走者になるかどうかは分かりません。前半で良いポジションを取るために、これまでは彼を1走に置くことが多かった。しかし、佐藤風雅選手(那須環境技術センター所属)など他の選手も力を伸ばし、チーム全体が底上げされてきました。4×400mリレーでは、序盤の展開でメダル争いに参加できるかどうかが決まりますが、最後の争いはやはりアンカーの力で決まります。なので、アメリカなどの強豪は、エースをアンカーに置きます。オレゴン大会では、コーチ陣が選手のコンディションを見て決めるでしょう。その配置にも注目です」

 4×400mリレーの予選は、日本時間7月24日(日)9時40分よりスタート。決勝は、日本時間7月25日(月)11時35分より、今大会の最終種目として行われる。サニブラウン選手の決勝進出で沸いたこの大会を、日本の400mスプリンターたちの復活で締めくくることはできるのだろうか。体の内側を見る運動生理学の視点や、序盤のレース展開など、見どころが凝縮された3分間の最終レースとなりそうだ。

躍動する日本人スプリンター 400mリレーの「逃げ切り戦略」とは?_4
東京大学特任研究員の竹井尚也さん。東大陸上運動部コーチ、駿河台大学陸上部コーチを務めながら、東京大学八田研究室にて運動生理学の研究に日夜励んでいる
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文/柴谷晋 
参考文献/八田秀雄『新版 乳酸を活かしたスポーツトレーニング』(講談社)