花粉症が食物アレルギーの原因を誘発!? 

食物アレルギーは、言うまでもなく食物を摂取したことが原因で発症しますが、実は、食物以外にも、環境アレルゲンや、引き金となるさまざまな「二次的要因」が関与することがあります。二次的要因とは、発症に影響を与える要因という意味です。
 ここでは、食物アレルギーの原因となる食物に絞って触れていきます。 

アレルギーの原因となる物質をアレルゲンという 

 原因となる食物に含まれ、生体にアレルギー反応を引き起こす物質を「アレルゲン(Allergen)」といいます。免疫学では、「抗原」という言い方をします。
 アレルゲンになり得るものの本体は、多くはアミノ酸が連なったたんぱく質です。はじめにアレルゲンが体内に侵入すると、それを排除するために、アミノ酸配列によって形づくられるアレルゲンの立体構造に合った形の抗体がつくり出されます。
それが、免疫グロブリン(Immunoglobulin、略称Ig)と呼ばれるたんぱく質の一種で、働き方の違いによって、IgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG抗体、IgM抗体の5種類があります。
 このうち、アレルギー症状を引き起こすのがIgE抗体で、IgE抗体価はその量、強さを示します。
 IgE抗体は、決まったアレルゲン(抗原)にしかくっつかないため、正式には抗原特異的IgE抗体という言い方がされます。
 例えば、アレルゲンがそばであれば、それにくっつくのはそば特異的IgE抗体、アレルゲンがピーナッツであればピーナッツ特異的IgE抗体、アレルゲンがダニであればダニ特異的IgE抗体ということです。
 そのため、血液検査や皮膚テストによって、特定のアレルゲン(食物や食物以外の抗原)に対する特異的IgE抗体が存在するかどうか、つまり陽性であるかどうかを証明することが、その特定の食物や食物以外の抗原に対するアレルギーであるかどうかを判断する際に必要となります。 

アレルゲンとして多いのは、果物・野菜・小麦・甲殻類の順 

 では、食物アレルギーの原因となる食物としては何が多いのでしょうか。
 年齢別では、0歳までは、鶏卵、牛乳、小麦が上位を占めますが、年齢が上がるに従って、魚卵類、木の実類、果物類、甲殻類などの頻度が上昇し、18 歳以上の成人食物アレルギーでは、甲殻類、小麦、魚類が上位を占めています(表1)。
 一方、図1は、私が勤務する相模原病院アレルギー科を2011〜2013(平成23〜25)年に受診した成人食物アレルギー患者さんの原因食物を示したものです。
 その結果、果物・野菜(豆乳・大豆を含む)が最も頻度が高く、次に小麦、甲殻類と続きます。乳幼児の時の鶏卵や牛乳のアレルギーが改善せずに成人まで持ち越す例も少なくありませんが、その3年間にはありませんでした。
 また、乳幼児は多くの場合、1人の患者さんが鶏卵、牛乳、小麦など複数の食物のアレ
ルギーを合併しますが、成人は、さまざまなアレルゲンが合併して発症するのは比較的少ないのが特徴です。OASは口腔アレルギー症候群、FDEIAは食物依存性運動誘発アナフィラキシーを意味します。 

大人の食物アレルギーは国民的お悩みの花粉症が関係していた!?_1
表1 『大人の食物アレルギー』より抜粋
大人の食物アレルギーは国民的お悩みの花粉症が関係していた!?_2
図1 『大人の食物アレルギー』より抜粋