大人たちが口をつぐむ「パンドラ」へ乗り込む中学生たち

投稿者はAさんという女性で、このお話は彼女が少女期に故郷で体験したエピソードです。そこは寂れた田舎町。子供たちには目立った遊び場もないような場所でした。その町の外れに一軒の空き家が建っています。二階建てのその建物は月日による風化で外観はボロボロ。いわゆる廃墟です。

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ですが、普通の廃墟と違うのは、大人たちにその廃墟のことを聞こうものなら、なぜか厳しく叱られてしまうこと。もちろん、近づくなんてもってのほか。みんななぜそのような態度をとるのか、大人たちは理由を言わず、空き家が存在しないかのように振舞おうとしていました。

遊び場の少ない子供たちは、そんな町はずれの廃墟に好奇心をくすぐられます。まれに大人の目を盗んでは空き家の周りを探索する子供たちも現れ、

「その空き家には玄関がなかった」

といった情報を持ち帰ってきては、それが子供たちの間でまた様々な憶測を呼びました。出入りを封じられた奇妙な家は、いつしかそのタブー性と相まって「パンドラ」と呼ばれるようになっていったそうです。

Aさんが中学生になって何か月か経ったころ、ちょっとした好奇心から「パンドラ」に探索しにいくことなりました。メンバーはAさんを含めて男女6人です。

玄関のない「パンドラ」ですが、1階には窓はあります。男のコのメンバーのひとりがこの窓ガラスを割り、ついに禁断の「パンドラ」の内部へと6人は足を踏み入れることになりました。

しかし、中は特に変わった様子もなく、家具や人が住んでいた形跡はありませんでした。肩透かしに思った彼らは、次に2階を探索しようと階段へと続く廊下へ差し掛かったところで、異様な鏡台を見つけます。鏡台には棒が立てかけており、そこには黒く長い髪のカツラがかけてありました。

「びっくりした……人が座っているのかと思った……!」

にわかに恐怖にかられるものの、探索を続けることにした一行は階段で2階に上がります。そして2階の部屋のひとつにも同じように棒にかけられたカツラとともに鏡台が置かれていたのです。悲劇はまさにこの鏡台がもたらしたのでした。