日本の若者はなぜ、左傾化しないのか?
ーー同じように賃金への不満や環境問題への関心の高さはあっても、日本の若者が左傾化しないのはなぜでしょうか?
興味深い質問ですね。イギリスやアメリカ、西ヨーロッパの経済を変えた重要な出来事として、2008年の金融危機があります。それ以降、経済は成長しておらず、停滞し続けています。
だが日本では、このような状況はさらに長く続いているのではないでしょうか。さらに、日本は高齢な国です。イギリスやその他欧州の国々に比べて人口の平均年齢はさらに高い。それは政治にも特異な特徴を与えていると思います。
人々が反発をしたり不満をもつのは、状況が悪化した時、あるいは、新しい何かが起きた時です。同じ状況が長く続いている時には、新たに何かを作り上げようとするきっかけが、なかなか見つからないものです。
あとは、政治における可能性が不足しているのかもしれません。日本には若者の関心事を代弁するような魅力的な人物がいないのではないでしょうか。他の国では、経済システムの機能や気候変動の未来に関する憶測など、それらの関心事を代表する人々が多様な方法で表現していますが、日本の場合はどうでしょうか。
ーー日本でも、ほとんどの政党が高齢者にフォーカスしていて、若者たちに目が向けられていません。それは人口比率として高齢者が占める割合がとても大きいからです。だから、若者たちの投票率を上げることで、政党もより若い世代にフォーカスするようになるのではないかと考えています。
そうですね、若者たちが(政治に)参加することは必要不可欠です。選挙に行って投票しなくてはいけません。
イギリスの最も直近の総選挙(2019年)では、左派の党首をもつ労働党が大敗する結果となりました。この選挙では65歳以下の労働世代において、労働党が最も多くの票を集めたのにもかかわらず、です。なぜか。それは定年退職した高齢者たちの多くが投票に行ったからです。
日本では高齢者の数が多いことは深刻な問題です。これに対してできることは「高齢者たちの関心ごとと、若者たちの関心ごとをいかに近づけることができるか」にかかってくるのではないでしょうか。