「良く生きて、良く死ぬ」ための選択
私の著書『家で死のう! ――緩和ケア医による「死に方」の教科書』では、人生の最終章には、「病院で治療する」という選択肢以外にも、治療をやめて「家で生き抜く」(それはつまり「家で死ぬ」)という選択肢があることを知ってほしいと思います。
医師や病院に言われるがままにつらい治療を継続して、「生かされた」状態のまま逝くのではなく、最期まで自分らしく「家で生き」「家で死ぬ」ために、私の「在宅緩和ケア」はあります。
私の診療所の大きな方針は「本人が好きなように」「本人が望むこと」をサポートすることです。本人の人生なのだから、本人に主導権を取り戻してもらうのです。
だから、体にいいことだからといって、本人が望まないことはさせません。つねに「本人の笑顔を引き出す」にはどうすればいいかをケアの中心にしています。
緩和ケアと聞くと、「死ぬ前の人が行くところ」と認識している人もいるでしょう。そのとおりです。だから、「死にたくない」「死なせたくない」「死ぬはずがない」と思っている患者や家族は、私のもとにやってきません。病院で治療を続けても、人は死ぬのです。そして、多くの場合において、苦しみながら死んでいきます。
どうせ死ぬのなら、より苦しみのない方法がいい、そして最期まで自分らしく生きたい、そう考えられる人や家族が治療をやめて在宅緩和ケアを選びます。
「病院で治療をやめる」ということは、「死を認める」ということかもしれません。
「死を認める」ことができるかは、当事者になってみなければわからないことでしょう。
私も、いざ患者の立場になったとき、どう感じるのかはわかりません。在宅緩和ケアを選択し、穏やかに亡くなっていった人はみなさん、ある程度「死を認めていた」ように思えます。