火付け役は「レコード・ストア・デイ」
アナログが人気を集めるようになったのは、2008年に米国でスタートしたレコードの祭典:レコード・ストア・デイによるところが大きい。
世界中のレコードショップとアーティストが手を結び、アナログレコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有するイベントで、アーティストたちは開催日に新曲や貴重な未発表曲、ライヴ音源などの作品をアナログ盤でリリース。ビッグな著名アーティストがレアな限定盤を出すことも多く、しばしば世界各地で争奪戦が繰り広げられる。
レコード・ストア・デイは既に日本でも定例化しており、日本独自のスピンオフイベントとして、夏に行われる『シティ・ポップ・オン・ヴァイナル』、11月の『レコードの日』が誕生した。
新型コロナに見舞われてからは、密を避けるために分裂開催を実施するようになったが、それでも当日にはショップに多くの人々が詰めかけ、目的のレコードを買い求めている。昨2021年には、アニメのレコードに特化した『アニソンon VINYL』も開催された。
だが、再び成長を続けるアナログ盤市場にも、暗い影が忍び寄ってきている。復活ブームがあまりに早く世界へ拡散したため、需要と供給のバランスが崩れてしまったのだ。
CDにその座を奪われたアナログ盤の生産工場は、多くが閉鎖されたり、CD製造に乗り換えたりして、世界に数えるほどしかなくなった。それこそ日本では、レコードをプレスできる生産メーカーは1社だけという時期もあったほどだ。
そこから2018年に、大手ソニー・ミュージック・グループが約29年ぶりにアナログレコードの自社一貫生産を再開。現在は数社がレコード製造を行ない、海外からの発注にも対応する。逆に発売スケジュールの関係から、国内レコード会社が海外メーカーに生産委託するケースも少なくない。