大人にこそ刺さる名言①「あなたの感じ方はあなただけのもので誰にも責める権利はない」
朝の母であり、槙生の姉である実里(みのり)の死。あまりにも突然のことで実感がわかない朝は、実の母の死に対して悲しいかがわからないことが、普通ではないのかもしれないと感じていた。
そんな朝に槙生は「あなたの感じ方はあなただけのもので誰にも責める権利はない」と言葉をかける。
組織やチームの中で過ごしていると、「こうであるべき」「これが普通」という無意識の圧力に感化されてしまうことに、辛くなってしまう経験はないだろうか。
もちろん相手に合わせる、ということは、生きていくには必要なスキルなのも事実。
しかし、自分の感情を守ることを優先して生きることも決して悪ではないと、このセリフは教えてくれる。
人それぞれ物事への感じ方や考え方は当たり前に異なる。そして、そこには間違いも正解もない。だからこそ、せめて自分だけは自分の心の味方でいてあげることも、ときには重要なのかもしれない。
大人にこそ刺さる名言②「群は危険と安全を同時にはらむ 私同様 あなたも群に向かないかもしれない」
朝との同居生活が始まったことに対する槙生のモノローグ。この後のモノローグでは「あなたはどんな群にいてもさみしいかもしれない」と言葉が続く。
集団の中にいるからこそ、ふとした瞬間に孤独を感じることもあるだろうし、そもそも確定的なゴールが「群」に用意されているわけではない。
また「この企業に入ったから絶対に安定的な生活が送れる」「この人と結婚したから絶対に幸せにしてもらえる」という他力本願な幸せの掴み方へのリスク喚起とも読み取れた。
自分に適した企業や学校に入ることが人生の目的として達成されたとしても、必ず幸せになれるとは限らないことを私たちは時々忘れてしまう。
描いていた理想の新生活やキャンパスライフとのギャップに悩む人にこそ、自分が群に対して何を求めているのかを槙生のセリフとともに振り返ってみてほしい。
大人にこそ刺さる名言③「そんなチキンレースで自分の価値を試す必要なんてなかったのに」
槙生の元彼氏である笠町(かさまち)は真面目でハイスペックな好青年だ。しかし、うつ病に悩まされていた過去がある。
そんな笠町は、周囲の期待に答えるべく必死に会社にしがみついていたころを自分がプレッシャーの中で“チキンレース”に参加していたと振り返る。
そんな“チキンレース”の例として、「より楽をして良い目を見たやつが勝ち」「より危ないことをしたやつが勝ち」という男社会の洗礼の例が作中に挙げられているのが、この例に限らず誰が決めたのかすらわからない漠然とした人生の指針にプレッシャーを感じたことのある人は多いだろう。
自分の価値を認識するために、他者と比較して傷つきながらも自分を肯定する。誰かを下に見ることで得られる安心感は、果たして本当の意味で自分を充足させてくれる感情なのか。
“チキンレース”に乗らなくても、自分の価値をきちんと見定めて「自分には価値があるのだ」と信じる力を持つことこそ、人生を少しだけ生きやすくする秘訣なのかもしれない。