「スーパーはもやしで儲けようとしていない」値上げを阻む意外な事情
「もやしが安いからというより、値段を上げられないことが問題だと思っています」
取締役が指摘するのは、消費者の節約志向だけでは説明できない、スーパーの販売戦略だ。
「消費者の方に聞けば、10人いたら8人ぐらいは『10円高くても買いますよ』とおっしゃると思うんです。今まで25円や30円で買っていたもやしが10円上がっても、買うという人は多いでしょう。でも、実際はスーパーさんがその10円を上げることに非常に躊躇されると思います」
もちろん、これは取締役の実感に基づく見方であり、実際に8割の消費者が値上げを受け入れるという調査結果があるわけではない。
それでも、小売店が値上げをためらう理由には、もやしならではの事情があるという。
「例えば、隣のスーパーが20円台で売っているのに、自分の店だけ30円台だったら、売り上げに差が出るという話も聞きます。
スーパーさんは、別にもやしで儲けようと思っていないんですよ。安く売ってお客さんに来てもらい、ほかの商品も買ってもらう。そういう集客の道具として扱われている面もあると思うんです」
特に“安売り”を売りにするスーパーでは、もやしが客を呼び込むための目玉商品になっているという。
だが、その価格競争のしわ寄せが生産者に及んでいるとすれば、問題は根深い。
「今は取引に関する法律も厳しくなっていますから、昔のように値上げ交渉を門前払いすることは減っていると思います。ただ、実際に値上げの話をすると、ほかの業者への切り替えを検討するという話につながることもあり得ます」
メーカー側にも事情がある。工場の稼働率が低ければ、利益率が低くても注文を確保したい業者は出てくる。
「例えば、工場の稼働率が50%しかない業者なら、稼働率を優先して安くても仕事を取りたいと考えるかもしれません。それに、もし売り上げの20%を一つのスーパーに依存していたら、『値上げするならほかも検討する』と言われて、簡単に値上げできるでしょうか」
この経営者が挙げた数字は仮定の話だが、取引先への依存度が高い中小メーカーほど、価格交渉で不利になりやすい構造がうかがえる。













