「車で前を通ると綺麗」との声も

アートが投影されるのは毎日、午後7時15分から約45分間と、午後8時20分から約40分間の2回。平日は天使の羽が時折現れる程度だが、土曜日や特別な祝日には、穴吹デザインカレッジの学生作品やプロジェクションマッピングが流れる。

取材班は10月下旬の土曜日夜、鬼無駅を訪れた。2回にわたって投影されたのは、松などを描いた日本画風のイラストや、青紫色の天使の羽といった色とりどりの作品。夜の駅前を鮮やかに照らしていた。

プロジェクションマッピングも(撮影/集英社オンライン)
プロジェクションマッピングも(撮影/集英社オンライン)

約2時間の取材中、駅を利用する人は50人ほど確認できたが、立ち止まってアートを眺める人の姿は見られなかった。投影中に駅で降りた住民たちは「近所の人はもう見てませんね」「土曜日だからそもそも学生もいませんし…」と口を揃える。

地元の中年女性は、日ごろの様子をこう話した。

「たまに観光客の人が来ていますけどね。車で前を通った時に光っていると綺麗だなとは思いますよ」

費用の使い方に疑問を抱くこの女性は、別の駅で起きた事故を挙げた。

「少し前、市内でも中心地にある栗林駅のトイレの床が抜けて、落っこちた人が怪我をした事故があったんです。香川県の駅舎のトイレは昭和のままの設備のところも多い。鬼無駅にこれだけお金をかけられるのであれば、他の改修が必要なトイレにも目を配ってほしいです」

女性の証言の通り、JR栗林駅では2025年、男子トイレの床が腐食して抜け落ち、利用していた60代男性が深さ65センチの穴にはまり、両膝に全治1週間のけがをする事故が起きた。その後、男子トイレは緊急点検を経て再び使えるようになったが、女性は駅の設備の老朽化に不安を感じているという。