早朝の回線工事、ぬかるみ対策…「高校の文化祭みたい」

電源や水道、ネット回線、トイレも、公演に合わせて用意した。そのなかで川上氏が「盲点だった」と振り返るのが通信環境だ。初日は物販の受け取りシステムなどに支障が出て、来場者からは「3~4時間待った」との声も上がった。

「会場内には回線を引くために使える電柱がなくて、初日は衛星通信を使ったんですが、それが弱かったんです。そこで1日目の夜に反省会をして、2日目は朝6時前ぐらいから急遽工事をして、公園の外の電柱から物販までケーブルでつなぎました。ただ、それでも通信状態は悪かったですね」

会場のすぐそばを近鉄奈良線が走るが、通信回線を引くために使える電柱がなかったという(撮影/キムラ)
会場のすぐそばを近鉄奈良線が走るが、通信回線を引くために使える電柱がなかったという(撮影/キムラ)

初日終了後の反省会では、飲食店やワークショップが並ぶ「祭Area」の地面のぬかるみやドリンク販売も課題に挙がった。

平城宮跡はもともと地下水位が高く、低地の一部では地下水位が地表近くまで達する。そこに設営期間中の雨が重なり、さらに何万人もの来場者が歩いたことで、地面は急速にぬかるんだ。さらに、季節外れの暑さのなか、飲み物を買うにも長い列ができていた。

そこでスタッフたちは、翌朝5〜6時ごろから対策の作業を始めた。足元の補修に加え、ドリンクの販売方法も見直した。

「特別に土を入れる許可をもらい、養生マットも人力で運んで敷きました。

また、『水もすぐに買えない』というポストをSNSで目にしたので、ドリンクの売り場も増やしました。スタッフが客席に入り、野球場のビール販売みたいに売っていました。本当に何から何まで手作りで、まるで高校の文化祭準備みたいな感覚でした(笑)」

祭Areaの入り口(撮影/キムラ)
祭Areaの入り口(撮影/キムラ)

歴史を学ぶ体験をライブ演出へ

公演に向けて、キョードー関西を通じて奈良文化財研究所にも協力の依頼があった。企画調整部展示公開活用研究室長の小田裕樹氏に、当時のやり取りを聞いた。

「最初は正直、少し警戒していました。平城宮跡はあまりライブをやる場所ではないですし、どういう人たちなんだろう、と。でも、お話を聞くうちに、平城宮や奈良時代を真摯に知りたい方だとわかったので、こちらも丁寧に対応したいと思いました」(小田氏、以下同)

会場近くの奈良文化財研究所では、ACAねが制作した木簡が展示された(撮影/キムラ)
会場近くの奈良文化財研究所では、ACAねが制作した木簡が展示された(撮影/キムラ)

研究所は、古代に文字を記すために使われた木の札「木簡(もっかん)」に、出身地や名前、メッセージを書くワークショップを企画。ずとまよ側からは、来場者が書いた木簡をステージの演出にも使いたいという提案があった。

「普段、研究所にいらっしゃるのは歴史好きの方や修学旅行の方々が中心です。今回はまったく違う層の方々が来られるので、平城宮跡や奈良時代のことを知っていただけたらという思いです」

ワークショップで制作された木簡(撮影/キムラ)
ワークショップで制作された木簡(撮影/キムラ)