「打者がまったく対応できていなかった」衝撃の直球

有識者が高く評価する選手がいる一方、実際に試合を見た人間にしかわからない魅力を持った選手もいる。仮に12球団のスカウト全員が見逃したとしても、サラリーマンスカウトさん自身が『絶対に指名したい』と思う選手は誰なのか。

サラリーマンスカウトさんから名前が挙がったのは、生盛亜勇太(日本体育大)投手だった。

「今年は大学生投手も高校生投手も人材が豊富で、選手の立場からすると非常に厳しい激戦区だと思います。そんななか、先ほど挙げた馬場投手が先発して好投した後に、生盛投手がリリーフで登板した試合を観戦したんです。生盛投手も150キロ以上の球速を記録していましたが、印象的だったのは球の質でした。

馬場投手以上に、対戦打者が対応できていなかったんです。ゆったりとしたバランスのいいフォームから投げ込まれるストレートに伸びがあって、その質の高さが強く印象に残っています」

今年の目玉になりそうな変則系投手(画像/YouTube「サラリーマンスカウト ドラフト候補図鑑」より)
今年の目玉になりそうな変則系投手(画像/YouTube「サラリーマンスカウト ドラフト候補図鑑」より)

同じ150キロ超の速球でも、打者の反応は投手によって異なる。フォームや球の出どころ、球質などが組み合わさることで、数字以上に打ちにくい投球になることがある。

生盛も最速153キロを誇る右腕だが、魅力はスピードガンに表示された数字そのものではなく、打者が思うように反応できない。その光景が、強烈な印象として残ったという。

もっとも、一度の好投だけでプロでの成功が約束されるわけではない。サラリーマンスカウトさんも、生盛の課題を認識している。

「成績だけを見ると、指名されるかどうかのボーダーラインにいる選手かもしれません。その後の登板も映像で確認しましたが、私が観戦した試合で見せた一番いい状態を、常に安定して出せているわけではないと思います。

ただ、それでも私は最大値を評価したい。あのとき見せた力を、プロ入り後に安定して発揮できるようになれば、大きな戦力になってくれると思います」

安定感を重視するのか、それとも一瞬見せた突出した能力に将来性を感じるのか。

即戦力としての完成度だけを考えれば、別の選択肢もあるかもしれない。しかし、最高の状態で見せた球の威力にこそ、プロで飛躍する可能性が隠されている。