1回の遭難確率は7千分の1
なぜ「自分は遭難しない」と感じるのだろう。実は、確率で考えると、その感覚はそれほど間違ってはいない。
事実、確率の数字だけでいえば、ほとんどの登山者は遭難しない。何かトラブルがあったとしても、遭難一歩手前で済んだり、山の中でケガをしてもなんとか自力で下山できたりするケースがほとんどだ。自力で下山ができず救助を要請する「遭難」として記録されることは、実際にはごくまれである。
警察庁が発表している2025年の山岳遭難状況によると、発生件数は3122件、遭難者数は3623人だ。ここには山菜採りや観光、山での作業で遭難した人も含まれ、登山に限ると2866人になる。
レジャー白書2025によると2024年の登山参加率は人口の5.1%で、日本の人口をもとに計算すると約620万人が登山を経験している。ただしこのレジャー白書の数字には10代や高齢者層が含まれるため、実際の登山人口は300万~400万人程度と考えるのが妥当だろう。
仮に400万人を分母にすると、遭難者2866人の割合は約0.072%だ。レジャー白書によれば登山者1人あたりの年間平均活動回数は5.0回とされているから、登山1回あたりの遭難確率はざっくり0.014%、平均的に見ると7千人が同じ日に山に登り、そのうち1人が遭難する計算になる。この数字を見ると、「自分はまず遭難しない」という感覚は、感情論ではなく確率的な実感として納得できる。99.99%の確率で無事に帰れるわけだから、「絶対遭難しない」という表現は数字上はほぼ間違いではない。
1000回登れば8人に1人が遭難
1回の登山で遭難する確率は0.014%。この数字は確かに低い。
しかしこれは「1回あたり」の確率だ。
たとえば生涯を通じて1000回登山するとしよう。月に2回登れば年間24回、42年で1000回を超える。20歳から登山を始めたら60歳ごろには到達する回数であり、より頻回に登山をする人なら、もっと早くに到達するかもしれない。
この1000回という登山回数で1回あたり遭難する確率0.014%を計算すると、一度も遭難しない確率は86.93%、約87%だ。裏を返せば、1000回登山しているうち、少なくとも1回は遭難する確率が13%ある。これはおよそ8人に1人という確率だ。「運が悪いと遭難する」という表現が、急にリアルに感じられるのではないか。
もし「月に1回(年間12回)」山に登る人なら、たった1年間であっても、遭難する確率は約0.17%。約600人に1人は遭難するという計算も成り立つ。
確率を単純に計算すると、山行回数が多い人ほど遭難の確率は上がり、あまり行かない人は遭難しにくいことになる。しかし、能力に見合わない山を選びがちで遭難しやすい傾向の人もいれば、とにかく安全思考で行動する人もいる。確率の話はあくまでも大まかな傾向であり、自分の山行スタイルとセットで考えてほしい。













