不動産業界にとっても有望な市場

障害者のグループホームが増えている理由の一つには、不動産業界の事情もある。どういうことか。

若い人の人口が減り、一人暮らし用のワンルームアパートの需要は減少している。企業や大学が集まる東京都内ならいざ知らず、地方都市、あるいは大都市圏でも駅から離れてしまえば、アパートやマンションを建てても入居者を獲得するのは容易ではない。

その点、障害者のグループホームや有料老人ホームはまだ需要が見込める。障害福祉は成長を続けるマーケットともいえる。そこで、住宅メーカーや賃貸住宅の大手企業が障害者のグループホームや有料老人ホームに相次いで参入しているのだ。

グループホームや有料老人ホームの入居者は、毎日駅から会社に通勤するわけではないから、駅近くである必要はない。そうすると、地の利が悪い場所にちょっとした土地を持っている人にとっても、いい土地活用の方法になる。

ある大手住宅メーカーのウェブサイトには、こんなうたい文句が掲げられている。

「社会的な意義の高い土地活用としてぜひ積極的にご検討を」

この会社は国内の障害者数が増えていることや、グループホームのニーズが高まっていることをサイトで説明。その上でこう呼びかけている。

「不足しているグループホームをさらに拡大するには、地域の発展や社会貢献にご理解のある土地オーナーさまのご協力が欠かせません」

「交通利便性の良い土地が好まれる一般的な賃貸住宅と違って、郊外エリアなど条件的に不向きとされる土地でも、活用が可能です」

グループホームを建設したら、住宅メーカー側が土地オーナーから一括で借り上げて、毎月決まった金額の賃料を支払う。住宅メーカー側は建物をグループホームの運営事業者に転貸(サブリース)し、賃料を受け取るという仕組みだ。土地オーナーからすれば、入居者が少なくても、毎月決まった額の賃料が入ってくる。有名な大手住宅メーカーだから、安心感もある。

この住宅メーカーがグループホーム運営のパートナーとして選んだのが、恵だった。当時、この住宅メーカーはネットにこう書いていた。

「株式会社『恵』様のように利用者を第一に考える運営事業者様と提携することで、良質なグループホームを数多くご提供することが可能となり、不足する障害者グループホームの課題解決の一助にしていきたい」

2023年に恵の問題が表面化した際、関係者の間ではこの住宅メーカーの責任を問う声も上がった。住宅メーカーは右記の文章のサイトを削除、何もコメントは出さなかった。恵のグループホームを選んだ人の中には、大手住宅メーカーと連携しているから信頼できると思った人もいただろう。

強度行動障害を持つ入居者にずさんな対応をしていたという障害者グループ施設の「ふわふわ春日井」 写真/共同通信社
強度行動障害を持つ入居者にずさんな対応をしていたという障害者グループ施設の「ふわふわ春日井」 写真/共同通信社

その点では、確かに責任の一端はあるだろうが、私は実際のところはこの住宅メーカーも恵の実態をよく知らないまま、経営陣の説明を信じてしまったのではないかと思う。

いずれにせよ、グループホームの運営会社からすると、このように不動産業界の協力が得られれば、ホーム数を増やしていくのに好材料となる。