訪問看護でも不正請求
恵は精神科の訪問看護ステーションも運営していた。「訪問看護」と聞くと、身体的な病気の患者や終末期の高齢者の自宅に行って、医療的ケアをする光景を思い浮かべる人が多いかもしれない。
だが、知的障害や精神障害、発達障害がある人の場合、特に身体的な疾患がなくても、服薬管理や生活支援が必要だと医師が判断して、「訪問看護指示書」を書けば、訪問看護ができる。訪問看護には介護保険が適用される場合と、医療保険適用の2通りがあるが、精神・発達・知的障害者を対象にした精神科の訪問看護は医療保険。
介護報酬よりも高めの診療報酬が支払われる。グループホームに入っている人にも訪問看護は提供可能で、近年はそうしたケースが増えている。
恵の場合は、グループホームの入居者が日中通う「生活介護事業所」という通所施設もホームの隣で運営するケースが多かった。「生活介護」というのは、重度の障害者が通うデイサービスのような施設だ。
つまり、恵は入居者に対しグループホーム、訪問看護、生活介護と3種類のサービスを自社で提供していた。公的な報酬も3種類それぞれで得ることができる。複数のサービスで自社へ誘導する「囲い込み」と呼ばれる手法だ。
名古屋市にある恵の訪問看護ステーションに勤めていた看護師ら複数の元社員はこう明かした。
「診療報酬をなるべく多く取るため、所長の指示で、必要のない入居者まで『健康管理』などと理由を付けて週3回、訪問看護に入っていた」
「利用者数に応じて所長の給与が増える仕組みだった」
「週3回」は制度の上限だ。看護の専門家に聞くと、週3回訪問が必要なケースは障害がかなり重かったり、状態が不安定だったりする場合だという。ただ、看護師が「週3回必要だ」と主張すれば、必要性を否定するのは難しい。
ある看護師は、ほかの看護師が記録上、早朝や夜間に訪問していることについて所長からこう聞かされた。「これ、実はこの時間には行ってないんだわ」。早朝や夜間の訪問には、報酬が加算される。そのため、実際の訪問時間とは違う虚偽の記録が作られていたという。
「ほかの看護師の中には、入居者の部屋のドアを開けて『元気? 変わりない?』と声をかけて、数分で済ませてしまう人もいました。でも、実績記録ではもっと長く訪問したことにしていた」。この看護師はそう証言した。
訪問看護を受け入れる側のふわふわ(恵が経営する施設の名称)の元スタッフもこう話す。「血圧や体温を測ることさえせず、私たちが測定した記録を書き写して、訪問したように装っていた看護師もいました」
しかし、訪問看護を提供するには、前述した通り、医師の指示書が必要だ。指示書はどうなっていたのか。
「恵と『グル』のクリニックが名古屋市内にあるんです」
「訪問看護ステーションの事務員が都合のいいように指示書を作り、後からそのクリニックのOKをもらっていました」
元社員らはそう話した。このクリニックの医師はふわふわに訪問診療に入り、訪問診療でも診療報酬を得ていたという。恵とクリニック双方にとって「ウィン・ウィン」というわけだ。薬局も、恵と通じているところがあり、都合のいいように薬を出してくれていたという。













