「行政はうちをつぶせない」
恵のこうした不正は2023年9月、愛知県の「中日新聞」や共同通信の報道で明らかになった。しかし、愛知県や名古屋市など行政は気づいていなかったのか。
食材費の過大徴収については、愛知県岡崎市が2022年2月に把握。その後、愛知県を通じて厚労省に連絡が行き、厚労省が23年6月から各地の自治体に同様のことがないか、調査を始めていた。
一方、報酬の不正請求については、バレないよう恵が対策を取っていた。2019年に恵の幹部が社員に送ったLINEにはこんなことが書かれていた([ ]内は筆者が追加)。
「全店舗[グループホームのこと]、書類(個人ファイル)を完璧に年内に必ず終わらしてください!」
「俺と○○でまず守山[名古屋市守山区のふわふわのこと]をきれいにしにいきます」
「豊川[愛知県豊川市のふわふわのこと]は個人ファイルを完成させ、[スタッフの]常勤換算[で基準]をきらないようにしてください」
このメッセージについて、ある元社員は「会社が自治体の実地指導に備えて、書類を整えるよう改ざんを指示した内容です」と説明。恵ではスタッフや利用者の名前の印鑑を勝手に押し、人員配置やサービスの実績を書類上作り上げるということが普段から行われていた。
別の元社員はこんなことも明かした。「グループホームなどに自治体の実地指導が入る際は、本当の管理者ではなく、ごまかしがうまくできる別の社員が管理者を名乗って対応していました」
自治体が障害福祉サービスの事業所を訪問して行う「実地指導」(運営指導)は、書類が中心の調査だ。しかも1カ月ほど前に事前通告するため、事業者側がつじつまを合わせようと思えばできてしまう。
複数の元社員には、行政の姿勢が弱腰のように映った。ある元社員は納得できない様子でこう話した。「私を含め、複数のスタッフが不正や虐待の疑いを行政に通報しましたが、何ともならなかった。その間に恵はどんどんグループホームを作っていった」
恵は、ほかのグループホームが引き受けないような対応の難しい障害者も受け入れていた。それは高い報酬を得る目的もあったとみられるが、行政と親にとってはありがたい存在だった。行政が二の足を踏んだのは、そうしたことも影響したのだろう。
会社側はそれを見透かしていた。ある元幹部社員は、不正行為について取締役に異議を唱えた際、返ってきた言葉が忘れられない。
「愛知県や名古屋市に言っても相手にされないと思うよ。規模が大きくなったうちをつぶせば、多くの利用者が行き場を失うから、行政はつぶせない」
要するに、行政はなめられていたわけだ。













