複数の自治体が「経済的虐待」と認定

結局、2023年9月の報道から9カ月後の2024年6月、愛知県と名古屋市はふわふわ5カ所に指定取り消しの行政処分を発表。

厚労省は、約100カ所のグループホームのほか、通所施設などについても恵の事業所指定の更新を認めず、順次打ち切る「連座制」を適用することを決めた。つまり、恵は障害福祉の事業を運営できなくなることになった。大手の障害福祉事業者に連座制が適用されたのは、これが初めてだった。

「恵」の本社が入っていたビル=2023年8月、東京都港区 写真/共同通信社
「恵」の本社が入っていたビル=2023年8月、東京都港区 写真/共同通信社

各地の自治体の調査では、食材費の過大徴収は約3億円に上り、複数の自治体が「経済的虐待」と認定。恵は入居者に返金した。ほかの虐待行為も認定されたが、一部にとどまった。

恵が不正に受け取った障害福祉の公的な報酬は愛知県内だけでも4億円以上。恵は加算金を含め、約5億9000万円をその後、返還した。愛知県以外も含めれば不正の額はもっと大きいとみられるが、恵は金額を最後まで明らかにしなかった。

障害福祉からのいわば「退場処分」となった恵は、2025年3月、事業を他社に譲渡(売却)することに。グループホームや通所施設、放課後等デイサービスなど約240カ所を神戸市の介護・福祉事業会社「ビオネスト」グループに一括で譲渡した(ほか一部は名古屋市の別の会社に譲渡)。

利用者は希望すれば引き続きサービスを受けることができ、スタッフもこれまでと同等以上の雇用条件でビオネスト側に移って働けることになった。

一方、恵が運営していた訪問看護は制度上、障害福祉ではなく、医療保険のサービスだ。そちらのほうはどうなったのか。医療保険の訪問看護を所管するのは、厚労省の地方出先機関である厚生局。東海北陸厚生局が恵への行政処分を発表したのは、事業譲渡から4カ月後の2025年7月。つまり、恵がとっくに訪問看護をやめた後のことだ。

したがって、「行政処分」といっても、処分する相手がいなくなっていたので、指定取り消し「相当」ということになった。返還を請求した診療報酬はわずか約49万円。厚生局の担当者も「本当にこれだけかと聞かれると、あくまで裏づけが取れた金額です」と答えた。

不正を指示していたとされる訪問看護ステーションの所長は看護師資格を取り消されるわけでもなく、普通に看護師として働き続けることができる。「これでは『やった者勝ち』ではないか」。私は無力感を抱かざるを得なかった。