現場講師が話すそろばん学習のメリット
東京都では、私立中学校へ進学する子どもの割合も増えている。東京都教育委員会の統計では、都内の私立中学校への進学率は2014年の16.4%から、2024年度19.9%まで上昇。およそ5人に1人が私立中学校へ進学している計算だ。
ただ、英一君の保護者がそろばんに期待しているのは、受験に役立つ計算力だけではない。小学校入学を控えるなかで、「学習する習慣」を身につけてほしいという思いもある。
「教室で45分間静かに座っていることも、小学校に入るまでの練習や準備としていいかなと思っています。だから、私はそろばんがものすごく上手になってほしいとは、実はそれほど思っていません。落ち着いて授業を受ける練習や、宿題を持って帰って家でやるという習慣。そういうものが身についたらいいなと思っています」
受験に備えた計算力だけでなく、小学校入学後を見据えた「学ぶ習慣」を身につける場としても、そろばん教室は期待されている。
ただし、3~5歳で始める子どもが増えているからといって、「早ければ早いほどいい」わけではない。
「英一君のようにしっかりしていればいいのですが、まだ(そろばんを始めるには)早い子もいます。お母さんだけが気合を入れていて、子どもは走り回っているようなケースも」(井上氏)
受験を意識すれば、「少しでも早く始めなければ」と焦る保護者が出てくるのも無理はない。だが、未就学児は同じ年齢でも発達の差が大きい。数字を理解できるか。一定時間座っていられるか。先生の話を聞けるか。そして何より、本人が楽しめるか……。開始時期は、年齢だけで機械的に決められるものではないだろう。
そろばんに求められるものは、かつてのような「計算を速く正確にする技術」だけではなくなった。
受験を見据えた暗算力から、数に親しむことや集中力、学習習慣まで……。その役割を広げながら、そろばんは幼い子どもの習い事として、新たな地位を得つつある。
取材・文/千駄木雄大













