そして鴨川にやってきた
「平野様、お待ちしておりました」
東京から車で2時間。千葉県鴨川市に建設中の超高級老人ホームにやってきた。エントランスは高級ホテルのようで、コンシェルジュの女性も若くて美しい。私の担当者となるダークスーツの男が深々と頭を下げる。まだ30〜40代くらいだろうか、こちらはホテルマンというよりは、銀行員か営業マンといった風情である。
男に案内され、陽光の射し込むガラス張りのロビーを抜けて、奥へと進む。ヨーロッパの美術館のように通路が広く、天井も高い。白と木目を基調にした空間に、男の声がこだまする。まだ誰も住んでいないので、ここにいるのは私たちだけなのだ。
豪華な応接室で説明を受ける。
「我々のレジデンスは、22階建ての建物になっております。5階から22階が住居フロア、2階3階は介護が必要な方のためのフロアとなっています。どうしても高齢者施設、老人ホームというと、介護が必要になってから、体が弱ってから入るイメージがありますけれど、我々のレジデンスはあくまでお元気な方にお入りいただいて、ご本人様らしい生活を、この鴨川で新たなライフステージをお楽しみいただくのがコンセプトです」
よし来た、望むところだ! こちとら年寄りばかりの施設を見てきて、辟易としてるのだ。
「建物の1階には亀田グループのクリニックを開設予定です。また看護師が24時間常駐して、何かあった時にはお部屋の緊急ボタンを押せば、すぐに駆けつける監視体制で、安心して生活していただきます。
その中でだんだん体が弱くなってきて、食事をするとか、トイレに行くとか、お風呂に入るのが1人では難しくなってきたなという段階で、一般の居室から介護のお部屋に移ることができます。大体目安としては要介護3ぐらいです。こちらのお部屋も看護スタッフが24時間常駐しておりますので、安心してご生活をいただいて、最終的にはお看取りまでさせていただきます。
一般的な高齢者施設はどちらかなんです。お元気な方が入れるけれど、介護が必要になったら出なければならない。もしくは介護が必要になった方だけが入れる。
我々はお元気な方に入っていただき、その後に介護が必要になっても、そのまま同じ建物でお過ごしいただける施設になっています」
続いて話は、入居要件へ。60歳以上で自立して生活できること。身元引受人を1名つけること。身元引受人は自分より年下の親族から選ぶが、見つからない場合は保証会社を立てる。入居者が認知症になった場合の判断や、死後の遺体や遺品の引き取りなどを身元引受人が行う。
利用権方式について。入居者は部屋を分譲で買い取るのではなく、部屋と施設を「利用する権利」を購入する。だから利用権の売買や貸し借り、相続はできない。
利用権を支払う「前払・月払方式」と、減価償却のシステムについては、割愛する。
提出書類について。まずは資産の概要書。途中で資金が尽きて支払いができなくなることを防ぐため、年金を含めた収入、預金、株式、不動産といった総資産額を自己申告する。
次に健康調査書。生活習慣などのアンケートを記入し、看護師、介護士と面談を行う。認知症の検査も受ける。検査に合格できなければ、他の入居者の迷惑となるので入居お断り。入居後に発症した場合は、最後まで面倒を見てくれる。
それから健康診断書。身長と体重、血液、尿検査、胸部レントゲン、心電図などの基本的な検査を各自病院で受けて、診断書を郵送する。
これらの書類提出後に入居審査があり、合格すれば契約へ。入居者と身元引受人が同席して捺印、一時入居金を振り込んで鍵の引き渡しとなる。
文/平野悠












