“外側”が剥がれていることは間違いないが…
高市早苗首相について語るとき、「安倍晋三の後継者」という言葉がよく使われる。安全保障、憲法改正、経済安全保障。政治思想を並べれば、たしかに2人は近い。
トロント大学のフィリップ・リプシーも2026年、学術誌『パシフィック・アフェアーズ』に発表した「地滑り的大勝の後――高市政権と安倍政権の比較」で、安倍氏を高市氏の政治的な師であり、思想上の盟友と位置づけている。
高市氏は憲法改正や経済安全保障など一部の分野では、安倍氏以上に主導権を取りやすいとも分析した。実際、2026年2月の衆院選で自民党は316議席を獲得した。衆院だけなら圧倒的である。
それでも、最近は支持率が落ちている。
私が一番引っかかったのは、支持率そのものではない。「誰が離れているのか」である。
2026年8月の民放調査では、高市内閣の支持率は59.2%だった。自民党支持層では、なお86%が高市内閣を支持している。一方で無党派層では49%まで下がった。発足直後には無党派の80%が支持していたから、“外側”が剥がれていることは間違いない。
安倍政権は支持率が落ちても戻ってくる仕組み
86%(自民党支持層)と49%(無党派層)。
最初にこの2つの数字を見たとき、私はこれが高市政権の弱点だと直感的に思った。安倍政権には支持率が落ちても戻ってくる仕組みがあったからである。
早稲田大学の河野勝は2021年、ケンブリッジ大学出版局から刊行された研究書で「なぜ安倍内閣の支持率は復活するのか」という研究を発表している。
2015年の安全保障法制をめぐる支持率低下を調べると、安倍氏から離れた中心は、もともと安倍氏を嫌っていたリベラル層ではなく、保守的な人々だった。政策的には安倍氏に近いのに、法案の進め方などに反発して一時的に支持を引っ込めたのである。
政策距離は近い。だから時間がたつと戻りやすい。安倍政権の支持率低下には、最初から「帰ってくる人」が交じっていた。家出に近い。
その点、高市氏は逆に見える。自民支持層の86%は、いまだに支持しているのだから。













