スープを飲み干すのは悪か?
ラーメンが好きでも、「スープは飲まないようにしている」という人は少なくありません。「塩分が多いから」「体に負担がかかりそうだから」と残す方も多いでしょう。確かに、塩分摂取について神経質になる風潮がある今の日本では、それが正しい選択のように感じられるかもしれません。ですが、もう少しスープの本質に目を向けてみると、その見え方は大きく変わります。
ラーメンのスープは、単なる味付けのための塩味の強い汁ではありません。前述した通り、そこには肉や魚介、野菜から長い時間をかけて抽出されたアミノ酸やコラーゲン、ミネラルといった栄養素がたっぷりと溶け込んでいます。
その滋養の高さは、あくまでたとえですが「飲む点滴」と表現したくなるほどです。これだけのエネルギーと栄養が凝縮されているのに、塩分だけを理由にすべて残してしまうのは、実にもったいない判断のように思えてなりません。
では、気になる塩分についてはどう考えればよいのでしょうか。実は「日本人は塩分を摂りすぎている」という通説には、科学的根拠が乏しい面があります。むしろ、過度の減塩によって食欲が落ちたり、熱中症になったり、カロリーが不足して健康を損なうリスクのほうが大きいのです。
もちろん重症の腎臓疾患などですでに医師から厳密な減塩を指示されている方は例外ですし、「たくさん飲めば飲むほどよい」という乱暴な話ではありません。しかし、そうした特別な事情がない限り、必要以上に恐れることはありません。個人差やその日の体調、汗をかいた量などに応じて、柔軟に考えてよいのです。
精神科医として強調したいのは、「飲みたいのに我慢する」という行為がもたらす心理的ストレスです。「食べたい」「飲みたい」という自然な欲求を押し殺すことは、小さなことであっても積み重なれば精神的な負担となり、免疫力や気分に影響を及ぼすことがあります。
もし「スープを飲むこと」を禁止事項にしてしまうと、ラーメンを食べるたびに罪悪感やストレスが生まれてしまうでしょう。その方が長い目で見れば体に悪影響を与えかねません。
では、どう向き合えばよいのか。答えは、白黒つけないことです。体調やその日の食事量に合わせて、柔軟に考えればいいのです。要は、その日の体調と相談しながら「自分にとってのちょうどいい落としどころ」を見つけることが大切なのです。スープは決して悪者ではありません。よいか悪いかではなく、「どう飲むか」「どのくらい飲むか」を自分で選べばよいのです。
文/和田秀樹













