攻撃で失われた販売業者の商品総額は約5000億円とも
攻撃の衝撃は倉庫の外にも漏れ出した。
ロイター通信が取材したモスクワの商品受け取り所では、それまで1日約400個届いていた荷物が約150個に減った。
売り上げは約半分に落ち込み、店主は赤字に耐え切れず店を売りに出したが、買い手は見つからないという。店主は冗談交じりに取材した記者へ、こう持ちかけた。
「1ルーブル(日本円で約2円)でどう?」
8月上旬にはロシア全土で3100カ所を超えるワイルドベリーズの商品受け取り所が、売買サイトに売却案件として掲載されていた。
被害はより深刻だ。
ロシア誌が専門家の試算として報じたところ、攻撃で失われた販売業者の商品総額は2150億〜2800億ルーブル(約4130億~5380億円)に上る可能性がある。
建物や設備、配送の混乱、売り上げ減少は含まない、商品だけの推計だ。倉庫そのものの復旧にも625億~808億ルーブル(約1200億~1550億円)が必要になるとの試算で、商品の損失額は復旧費の3倍を超える。
補償も十分とは言い難い。73万8000ルーブル(約142万円)相当の商品を失った業者への支払いは約4万1000ルーブル(約7万9000円)。
約500万ルーブル(約960万円)の損害を受けた別の業者には、1980ルーブル(約3800円)しか支払われなかったという。補償額の算定方法は明らかにされていないのが実情だ。
本当の標的は「普通の暮らし」…危うい「物流戦」
さらにロシア最大手銀行ズベルバンクには、通販業者など約300社から融資の返済条件変更を求める申し込みが寄せられた。ロシア中央銀行のナビウリナ総裁も、物流の混乱が物価上昇につながるか注視する姿勢を示している。
では、これは軍事作戦なのか、経済戦争なのか。
ウクライナ当局者によると、ワイルドベリーズ攻撃には戦時経済を混乱させるだけでなく、普通のロシア人の日常生活に戦争の影響を及ぼす意図もあるという。当局者が例に挙げたのが、子供の新学期用品だ。
ロシアでは地方都市でもワイルドベリーズの商品受け取り所が生活インフラになっている。「戦争は遠くの前線で軍人がやっている」と思っていても、子供の学用品が届かなくなれば話は別だ。
ウクライナがロシア深部への攻撃で掲げてきた「戦争をロシアへ戻す」という発想が、ここでは極めて身近な形になっている。
ただし、この作戦は危うい。
一連の倉庫攻撃では少なくとも13人が死亡した。商品を失う中小業者の多くも戦争とは無関係だ。さらに「軍民両用品が置かれている物流施設は攻撃対象になり得る」という論理は、ロシア側にもそのまま跳ね返る。













