孤独は自分を取り戻す時間

マリ・キュリー、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー、ラビンドラナート・タゴールといった偉大な思想家は、孤独を尊重したことで知られている。

神秘主義者や冒険家たちも、長きにわたって群衆から逃れようと努めてきた。伝説によれば、ブッダは菩提樹の下で何年間もひとりで瞑想し、悟りを開いたといわれている。

単独世界一周の最年少記録を達成したラウラ・デッカーは、海の上でひとりだった。
「帆を調整してスピードを上げることもあるが、ほとんどの場合、どこまでも続く絹のような青い海と、その静けさを楽しんでいる」と書いている。

こうした先駆者たちが発見したのは、社会の雑音から離れると、自分がそうした環境でどのように形づくられたのかをはっきり理解できるようになるということだ。自分という人間を見極め、より偽りのない、独創的な自己表現が可能となる。

孤独の研究の第一人者であるジャック・フォン教授は、そのひらめきを「存在化の瞬間」と呼んでいる。脳が本質的な真実や隠れた傾向を見いだそうとする洞察の瞬間だ。

「そうした瞬間が訪れたら、抗ってはいけません」と、ジャックは2017年にあるインタビューで語っている。

「そのままの形で受け入れましょう。静かに、ありのままに浮かび上がってくるのを待つのです。抵抗しないでください。ひとりの時間を恐れてはいけません」

現代人が孤独を嫌う理由

この存在化の瞬間は、脳内でデフォルトモード・ネットワーク(DMN=電気信号や化学信号で情報をやり取りする脳細胞である“ニューロン”によってつくられた回路)が活性化しはじめた合図だ。とりわけ内側前頭前皮質、後部帯状皮質、角回などの働きが活発になる。

こうした領域は、内省、道徳的推論、問題解決、未来の想像で重要な役割を果たす。
シャワーを浴びているときや、ひとりで散歩しているときにすばらしいアイデアを思いつくことが多いのは、それが理由だ。

2024年に私がジャックに会った際、彼は研究テーマを広げ、孤独の本質と、孤独が意識に与える影響についてさらに調べていたが、それと同時に、私たちが自身の思考と向きあう能力を失いつつあるのではないかと危惧していた。

「ありのままの自分でいるとは、どういうことか?」

カリフォルニア州立工科大学ポモナ校のオフィスでじっくりと話を聞いたときに、彼は説明してくれた。

「思うに、われわれはその問いをあきらめて、同時に自分を他人のアイデンティティでおおってしまった。自分を知ることを恐れるようになったのです」

社会学者であるジャックは、近代化の影響で思考や自己認識が曖昧になったと考えている。社会システムは私たちのアイデンティティを外に向け、物質的な所有物やSNSの危うい指標に承認を求めさせているのだという。

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そのせいで、私たちの自尊心は内面から生まれるのではなく、ますます外的な要因に依存するようになった。その結果、かつては自己探求や内省に欠かせない道のりだった孤独が、もはや自分にとって何の価値もないと考える人が増えている。

「生まれたときから、誰もが喜び、幸せ、自尊心は外の世界にあると教えられています」
とジャックは指摘する。

「物質主義の西洋社会で育った人は、みんな『この車が欲しい、この腕時計が欲しい、Facebook の“いいね!”が欲しい、かっこよくなりたい』と考えるようになります。それが自己の深淵へと潜ることを妨げているのです」