ついに8月1日から、高額療養費の自己負担上限額が引き上げられた。前回の引き上げは2015年だったので、それ以来11年ぶりの実施になる。今回の引き上げは2024年末に提示された〈見直し〉案が契機になったが、このときの案は制度を利用する当事者の声をまったく聞いていなかったことや、引き上げ額のあまりの高さが大きな反発を招き、2025年3月に石破元首相の判断でいったん一時凍結に至った。
その後に患者団体などを交えた専門委員会を設置して議論が再開し、2025年末に政府があらためて作成した〈見直し〉案が、今回施行される内容だ。まずは、その具体的な金額を紹介しよう。続いて、2026年度予算案の一環として議論されたこの〈見直し〉案が施行に至るまでの経緯を簡単に整理してみたい。
充分な配慮がなされた制度運用なのか?
今回の高額療養費制度〈見直し〉のうち、この8月1日からの引き上げが決定している自己負担上限額とそれぞれの引き上げ幅は、以下に示す表のとおりだ。
[表1:2026年8月からの高額療養費自己負担上限額]
現行制度から今年8月の実施金額を比較した引き上げ率を見ると、どの所得区分でも7パーセント前後(しかも住民税非課税層の場合は約4パーセント)、と穏やかな水準に抑えられているようにも見える。また、多数回該当(直近12ヶ月のうち上限額に3回以上達すると、4回目からはさらに上限額が引き下げられる制度)の据え置きと年間上限額新設も考えあわせれば、今回の引き上げは、今国会で高市早苗首相や上野賢一郎厚労相が何度も繰り返していたように「長期療養者や低所得の方々に特に配慮をした」制度運用、と見えるかもしれない。
たしかに、年間上限の新設は画期的だ。この年間上限の導入は患者団体が厚労省の専門委員会や超党派議員連盟を通じて政府へ懸命に訴えてきたことで、それが反映された結果、現役世代では月額計算が基準の高額療養費制度に、初めて「年間」という考え方が持ち込まれることになった。多数回該当の金額据え置きとともに、これは今回の〈見直し〉の数少ないポジティブな部分といっていいだろう。
とはいえ、制度利用者の立場からみれば、この〈見直し〉は充分に配慮されたものとはいいきれない。
前々段落では総じて約7パーセント前後と記したが、具体的な引き上げ金額は高所得の区分アだと1ヶ月1万7700円、比較的低所得の区分エでは3900円だ。制度を利用しない健康な人ならば、「それくらいなら払えるだろう」と思うかもしれない。経済事情や金銭感覚は千差万別で、負担感の軽重も個々人の生活環境によって様々だろうから、「過重な負担だ」vs「がんばれば払えるはずだ」という主張は水掛け論になる可能性が高い。
ならば、この負担感の重さ / 軽さを他の何かに置き換えて考えてみよう。
たとえば、高負担感が限界に達していると巷間よくいわれる社会保険料が1ヶ月あたりこの金額分だけ上昇する、と想像してみればどうだろう。突然の大病や大ケガで肉体的にも精神的にも、そして仕事を休むことによって経済的にも疲弊している当事者が直面する医療費負担の重量感を、健康な人々も少し想像しやすくなるかもしれない。













