少数のチョークポイントに半島の運命がぶら下がる
クリミアは巨大な兵站基地だが、外と繋がる補給線は驚くほど細い。北はペレコープ地峡という幅5~7キロの帯、東はケルチ海峡。この少数のチョークポイントに半島の運命がぶら下がっている。ウクライナはこの急所を一つずつ潰しにかかった。
アルミアンスク近郊の道路橋、ヘニチェスク海峡の橋、チョンガル橋、ヴォインカの橋——いずれも精密攻撃を受け、大型トラックや軍用重機が通れなくなっている。ロシア軍は干上がった運河の上に急ごしらえの迂回路を作らされ、それすらも次の標的にされる。
そして2026年6月、決定打が放たれた。21日、ウクライナの長距離無人機と特殊部隊が、ケルチ海峡を挟む両岸——ロシア側のカフカース港のフェリーと、クリミア側ケルチの石油ターミナル——を同時に叩いた。
少なくとも3隻のフェリーが炎上し、海峡のフェリー輸送は完全に止まった。ゼレンスキーはこれを、ロシアのエネルギーインフラに対する「長距離制裁」と呼んだ。
この一撃により、クリミアは併合以来最悪の燃料危機に陥ることとなった。
ロシアが任命した行政トップ、アクショノフは、政府機能を守るために一般市民へのガソリン販売を無期限で全面停止すると発表した。停止前から燃料はクーポン制で週20リットルに制限され、市民は給油のために何時間も列をなしていた。
闇市場の価格は2倍に跳ね上がり…
闇市場におけるガソリン価格は2倍に跳ね上がり、半島を訪れていたロシア人観光客は帰りの燃料を確保できずに立ち往生し、当局が専用ホットラインを開設する始末である。
こうした経緯によりロシア指導部は逃げ場のないジレンマを抱えることになった。
前線の部隊に送る軍用燃料を優先すれば、市民生活が干上がる。市民を救えば、前線が枯れる。どちらを取っても痛みが残る二律背反を、ウクライナの中距離打撃が突きつけ続けている。
プーチンが「ウクライナを締め上げる」ために併合した土地で、今や締め上げられているのはロシア自身なのだ。クレムリンが異例にも燃料不足の深刻さを公に認め、早期解決を約束したこと自体が、事態の制御不能ぶりを物語っている。
ウクライナによる攻勢を支えているのが、西側が供与した長距離精密兵器と、その運用の巧みさだ。
2025年11月以降、米英仏はウクライナが強力な兵器をロシア領内に使うことを段階的に認めた。これによりウクライナは、米国製ATACMSと英仏のStorm Shadowで、クリミアの防空網と指揮所をシステムとして解体しにかかっている。
5月の攻撃ではS-400の中核レーダー「92N6」が破壊され、6月21日にはさらに4基のS-400レーダーと2基のパーンツィリが潰された。防空の傘に穴が空けば、後から来る安価な自爆ドローンの命中率が跳ね上がる。













