「このキャプテンマークは遠藤航のもの」
とはいえ、堂安律とは、誰かと比べて初めてその凄さが分かる選手ではない。彼は独自の価値を持ったアスリートだ。
堂安は2018年ロシアW杯後に日本代表に初招集されて以来、「W杯優勝が目標」と公言し続けてきた(2022年カタール大会以降はチーム全体の合言葉となったが、現在の代表選手でそれより前にそう口にしていた選手は田中碧くらいしかいなかった)。カタール大会直後にはテレビ番組で「いつかはキャプテンを務めたい」とも語った。
しかし、その真意はキャプテンマークを巻きたいというものではなかった。
「キャプテンであっても、キャプテンではなくても、やることは変わらない」
「キャプテンがやりたいのではなく、責任を持ってチームを引っ張りたい」
あの日以来、彼は繰り返しそう語ってきた。
堂安はキャプテンマークそのものに興味はない。彼が情熱を注いでいるのは、リーダーシップを発揮してチームを強くすることなのだ。
遠藤の離脱という難局で、板倉が事前に相談した相手が堂安だった理由も、そこにある。堂安のリーダーシップを板倉はこう表している。
「チーム第一で常日頃から生活しています。律のプレーを見てもらってもわかる通り、本当にフォアザチームというか…。攻撃でスペシャルなものを持っている選手なのに、ハードワークをして、チームのために(働く)のは見てわかると思うんですけど。ピッチ外でも、常にチームのことを話しています。ただそれは今に始まったわけではなく、以前からそうだったので」
だから、オランダ戦のキックオフが近づくとき、板倉は自らの手でキャプテンマークを堂安の左腕に巻きつけた。
「あの試合は(ベンチスタートだった自分に代わるゲームキャプテンは)律でいくとなっていたので。絶大な信頼を置いていますし、自分がキャプテンになってからも『一緒に引っ張っていくぞ』という気持ちをすごく伝えてくれるので」
そんな仲間の想いに感謝しながらも、オランダ戦の後に堂安はこう話した。
「このキャプテンマークは遠藤航のものなので。僕自身はそれを重く考えるというより、今、自分ができることをやろうと思っています。すごくポジティブなエネルギーで試合に臨もうと思っていましたし、全てを出し切るつもりでやったので」
キャプテンシーを発揮したいのではない。
キャプテンシーをも内包するリーダーシップを発揮したい男——。それが堂安律なのだ。
オランダ戦から今日まで、彼が見せ続けている振る舞いは、北中米のピッチで日本代表が「本物の世界一の集団」へと進化していく予感を、確かに漂わせている。
取材・文/ミムラユウスケ













