絶対的なエースとしてプレーで突き抜ける
――カタールW杯が終わってから所属クラブでの日常に戻りましたが、この3か月はどのように過ごしていましたか?
堂安 改めてW杯の影響力の大きさを知りました。あの激闘で得た自信、深く刻まれた悔しさが自分を成長させてくれたんだな、と実感しましたね。明らかにプレーの質、メンタリティーが向上しているという自覚があります。
心も体も研ぎ澄まされている感覚があって、練習も試合もミーティングもすべてが楽しい状態。つらい地味な練習もワクワクしながらやれています。「これが一番成長するときなんだろうな」という実感があるというか。でも、浮かれてはいません。今、ここで調子に乗ったら、現役が終わったときに絶対後悔してしまうと思うので。
――サッカー人生で初めてのW杯を経験し、強く感じたことはありますか?
堂安 (吉田)麻也君や(長友)佑都君のような選手が一番信頼されるし、価値のある選手だと思い知らされましたね。やっぱりどれだけ個人技があっても、周りにポジティブな影響を与えられないなら意味がないですから。
まさにアルゼンチンを優勝に導いたメッシの立ち振る舞いがそう。もちろん、メッシ自身が世界最高の選手であることは言うまでもないけど、カタールW杯では、彼の存在がチームメイトに勇気を与え、アルゼンチンを奮い立たせていました。
チームメイトの能力まで引き上げる、強くてたくましいスペシャルな存在でした。小さい頃から憧れ続けたひとりのファンとして、今までと違うメッシの姿を見ることができてうれしかったです。
――カタールW杯で見せたメッシのような姿が理想の選手像なのでしょうか?
堂安 そうですね。チームに安心感を与える存在が俺の理想の選手像です。やっぱり大事なときにゴールを決められるかどうか。「結局、あいつが決める」と誰もが思う選手こそ、チームのド中心。絶対的なエースとしてプレーで突き抜けられれば、自然と周りがついてくるはずです。
いろんなカタチのリーダーがいるけど、共通しているのは、「この人についてきたい」「この人の背中を見たら頑張れる」「この人の言動で雰囲気がガラッと変わる」と思われる存在であること。オン・ザ・ピッチだけでなく、オフ・ザ・ピッチも含めて、周りに影響を与えられるかどうか。
麻也君も佑都君もそういう素質を持っています。チームに対する影響力や、国民のみなさんに対する恩返しの気持ちの強さといった大事なものを、これまで誰よりも近くで見させてもらってきた。麻也くんのような頼もしい言動、佑都くんのようなチームを鼓舞する盛り上げ方が俺にできるかはわからないし、マネをするつもりもないです。俺は俺のやり方で日本代表の絶対的な存在になります。
――「日本代表のキャプテンをやりたい」とも発言されていました。現在の心境はいかがでしょうか?
堂安 これまで俺は「背番号10を背負いたい。エースになりたい」と言い続けてきたけど、今はそれ以上の存在になりたいですね。「日本代表を背負えるのは俺しかいない」「俺の力が必要だ」と本気で思っていますから。
俺は気持ちが強いし、夢もたくさんあるからこそ、そういう選手が背負わなきゃいけない。「堂安、頼むよ」とみんなに言ってもらえる存在になりたいし、それはつまり、日本のエースであり、リーダーになるということ。
そのためなら、チームメイトに嫌われてもいいです。年齢は関係ない。下を向いている先輩がいれば俺が巻き込んでいくし、苦しいときに仲間を引っ張れる存在になりたい。サッカー選手としてだけではなく、ここからさらにひとりの人間として成長していきたいです。その覚悟はもうできています。