料金は5時間で3万円。セラピストは40代だったが
里英の話は始終明晰で、取材を初めてすぐに理知的な女性だとわかった。なにかの行動について語る際、そうするに至った心情まで詳細に説明してくれる。が、恋愛の話となると途端に口ごもりがちになる。
いったん話題を変えることにして、初めて女風を利用した当時の話をしてもらうことにした。
「女風を利用した当時は、就職して二年目で、とにかく仕事が過酷だったんです。その時は会社が荒れていて、社長が部下に対してハラスメントを行っているような状態でしたし、上司などもあまりよくなかった。
仕事が忙しくて自宅に帰れない日もあったりみたいな状態で、追い込まれていたんだと思います。いっそ死んじゃいたいなぁって思うようになって自殺することも、検討に入れていました。
けど、どうせ死ぬなら、最後にやったことのないこと……男性と性体験をしてみたいって思ったんです」
これまでの人生でやり残したことを考えたら、男性との肉体的接触だった。
しかし、そうは思っても相手がいない。どうしたら初体験の相手が見つかるのか。
里英は、インターネットで女性用風俗についてリサーチを重ね、『処女卒業サポート』などいくつもの胡散臭いサイトの中から、セックス・サロゲートの資格を持つセラピストが在籍している店を発見する。
セックス・サロゲートとはセックス代理人のことだ。依頼者の性の悩みに寄り添い、実地指導も含めて解決に導く存在である。
日本ではまだあまり知られていないが、2013年に公開された、身体障がい者の性をテーマとした『ザ・セッションズ THE SESSIONS』という映画で、その存在が描かれている。
その肩書に安心感を得た里英は、利用を決意する。料金は5時間で3万円。セラピストは40代だったが、むしろ若いイケメンよりも気が引けないという点でよかったという。
初めて入ったラブホテルのベッドの上で、フェザータッチで攻めてくれるパウダーマッサージからのオイルマッサージ、そして性感マッサージもしてもらった。すべて気持ちよかったことは覚えているが、細部の記憶は曖昧だという。
「緊張したし、物とか取られたりしたら怖いなって、シャワーを浴びる時は、荷物を浴室の中まで持って行きました。あとはカメラとかついていて盗撮されてないかとかも、すごく警戒しました。
男性とキスをしたのも、身体を触られたのも男性器を見たのも初めてでしたが、男性器ってかわいいなって思いましたね。刺激とか摩擦とかで大きくなったりするのって素直じゃないですか」
無論、異性の前で裸になるのも初めてだった。
「わたしは体型に自信がないので、恥ずかしいというよりも粗末なものを見せて申し訳ないなっていうのがあったんですが、セラピストの方は褒めてまではくれないまでも『恥ずかしがらないで大丈夫』とかそういうことは言ってくれて。
プレイを終えた後の二日間くらい幸せな気持ちで、自殺願望も若干失くなって、仕事とか頑張ってみるかなって前向きになれたし、男性と接触することが怖かったのが、克服できたとも思えました」
女風を利用したことで弾みがついた里英は、マッチングサイトに登録をしてみることにした。この勢いで、処女を卒業したいと考えたからだ。
そこで出会った男性と2度ほどデートを重ねた後、「この人になら処女をあげてもいい」と考えて、初めてのセックスを経験することとなった。
以後、その男性とはセフレ関係となり、3、4回ほど会ってセックスをしたが、ほどなくして相手が地方に引っ越したこともあって関係が切れてしまった。
が、再び女風を利用しようと考えることはなく、むしろその存在すらすっかりと忘れてしまっていた。
文/大泉りか













