駐妻は現地人にモテる!!

――海外駐在員が風俗にハマったり、現地の女性と不倫したりしてしまう話はよく聞きますが、その妻も実は意外と不貞行為をしていることに、新刊『結論それなの、愛』を読んで驚きました。一木さんも駐妻だったそうですが、なぜそういうことが起きてしまうのだと思いますか。

一木けい(以下同) 理由のひとつとして、駐妻特有の孤独があると思います。

タイの場合、駐在員とその家族は、日本人学校の通学バスのルートや日系スーパーなどの利便性もあって、バンコクの高級住宅街に住むことが多いです。そこには近い属性の人ばかりが集まっていて、ほぼ日本語だけで生活することもできます。

会社の上司と部下や取引先の家族が同じマンションに住んでいることもあったり、何かと気を遣いますよね。

日本でバリバリ働いていた女性でも、駐在に帯同するとタイでは就労ができないんです。キャリアを中断することになった女性の中には、夫についてきたことを悔やんでいる人も少なくなかったと思います。働いていなかった女性でも「日本を離れるなんていやだ」と思いながらついてきた人もいます。

いざタイでの生活がはじまってみれば、駐在員である夫は、仕事はもちろん、ゴルフや日本からの出張者の接待で土日も忙しい。「旦那が浮気しているかもしれない」というような不安も、親やきょうだい、昔からの友達が近くにいないので気軽に話せません。

というのも、うっかり周囲の日本人に相談してしまうと、尾ひれがついた噂があっという間に広まり、夫の評価に関わるのはもちろん、それによって家族の生活が揺らぐ可能性もあります。

たとえば「慣れない海外でひとりで子どもを育てているみたいで物すごく孤独なんです」と奥様コミュニティで発言したら、その場では「わかるわかる」だったのに、数日後には「リゾート気分で来ちゃったのね」になってしまったり。日本でいうと、田舎の村社会みたいな感じでしょうか。

そんな状況もあって、夫以外の男性と親密になってしまう人もいるんだと思います。

――駐妻はどんなことがきっかけで、現地の男性と知り合うんですか?

タイの男性はすごく積極的で、情熱的で、マメです。ウィンクまではしてこないけど、「イタリア人かな?」ってくらい、日本人女性に声をかけてきます。しかも、相手の女性が子どもを連れていようが、自分が子どもを連れていようがお構いなしです。

駐在員の中には、お付きの運転手がいる家庭も多いのですが、その人が口説いてくるケースもあるそうです。しかも「この間、旦那さんと女性をホテルまで送ったよ」とか告げ口も添えて。大胆ですよね。

駐在中にタイ語を勉強したという一木さん
駐在中にタイ語を勉強したという一木さん
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――日本人男性にはないアグレッシブさですね(笑)。つまりタイだと日本人女性はモテるんですか?

かなりモテると思います。

この小説にも書きましたが、日本人女性は辛抱強いとか(激情型のタイ人女性と比較して)温厚だというイメージを持たれています。人を疑うことを知らない、ともよく言われます。見た目も、タイ人にとって白い肌は憧れだと聞きますし、実年齢より若く見られる傾向があると思います。

タイのエステやネイルサロンは日本に比べると安く、髪も肌も爪も手入れが行き届いている駐妻が多いことも関係しているのだと思います。

日本人女性が怒らないことは特に魅力的に感じられていますね。イメージにすぎないのですが(笑)。タイにはいわゆる恐妻家が多く、男性は妻をとても恐れています。浮気がバレて、股間をちょん切られたり、銃で打ち抜かれたりする事件が起こって、ニュースにもなっています。

日本では、そんな話はさすがに聞かないですよね。阿部定くらいでしょうか。この小説にも出てきますが、私の友人のタイ人女性は「彼が裏切ったら、股間をみじん切りにして、チャーハンにして本人に食べさせる」と言っていました。