判断が分かれやすい「嫌がる子どもへの食事の促し」

では、虐待にあたるかどうかは誰が判断するのか。

改訂版ガイドラインでは、虐待が疑われる事案の通報を義務付けており、その判断は自治体が担う。

「通報された場合には、しっかり事実確認をした上で、虐待の判断や必要な指導については市町村や都道府県などの所管行政庁を対応の主体として位置づけています。

また、虐待や不適切な保育を防止する研修について今年度から補助金をつけていますので、今後は自治体で研修をやっていただけるところも増えてくるのではないかと思います」

こうした動きを受け、自治体にも通報や相談の窓口が設けられている。

東京都の「保育所等における虐待等通報・相談窓口」の担当者はこう話す。

「通報や相談を受けると、それが虐待に該当するかどうか、国が作成したガイドラインに基づいて判断しています。たとえば『子どもが保育園に行きたがらなくなった』といった状況があれば、そういったところを加味した上で判断しています」

東京都庁(写真/PhotoAC)
東京都庁(写真/PhotoAC)

担当者によれば、すでに通報は寄せられてきており、集計した件数は今後公表していくと話した。

「虐待」の防止に向けた制度整備が進む一方で、虐待に該当しないと判断される保育上のかかわりや言動であっても、日々の振り返りや改善に向けた取り組みは不可欠だ。

前出のガイドラインでも「『虐待』に該当しないものについて、未然防止や改善の取組を要しないことを意味するものではない」としている。

それでは「苦手な食べ物でもひと口は食べてみよう」は虐待にあたるのだろうか。

保育現場で不適切保育防止研修などを行なう一般社団法人日本ウェルビーイング教育・保育協会代表理事の髙橋健司氏は、「行為が虐待に該当するかどうかは、主として『行為の強度・頻度』『保育士等の意図』『子どもの状況・影響』の3つの指標が勘案されます」としたうえで、判断が分かれやすいひとつの例として「嫌がる子どもへの食事の促し」を挙げる。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
写真はイメージです(写真/PhotoAC)

「苦手なものを嫌がる子どもに対し、大声で注意したりスプーンを口元に当てたりする行為は、単発であれば直ちに虐待とは断定しにくいとされています。

しかし、子どもが嫌がっているのを知りながら同様の行為を毎日繰り返し、結果として『登園をしぶる』という重大な悪影響が生じた場合は、総合的に『虐待』に該当すると判断されます」