父の訃報を知った日に起きた、忘れられない偶然

――今年1月、舞台『忠臣蔵』の公演中にお父様が逝去されました。当日のことを改めて教えてください。

藤原紀香(以下、同) 公演の最中に父の訃報を聞きました。亡くなった当日、不思議なことがあったんです。

――不思議なこと、というのは?

普段、仕事先で父の話をすることはないのですが、その日はなぜか、夜の部の一幕と二幕の幕間に、ふと父のことを思い出して。

楽屋で衣装さん相手に、無性に父の話をしたくなり、「大晦日におせちを持って会いに行ったら、おせちはいらん、ピザを食べたいんや、ビールが飲みたいんやと言い出してね(笑)」など、とめどなく話していたんです。普段は舞台の衣装さんにプライベートの話はしませんし、父のことを話すのも初めてでした。

その後、後半の二幕へ。無事に公演を終えたとき、マネージャーから「お父様が亡くなられたとご実家より連絡がありました」と知らされました。

――お父様の訃報を知ったのは、公演後だったんですか?

はい。すぐに関西にいる弟に電話をしました。そして亡くなった時間を聞いたら、なんと、私が突然、幕間の楽屋で父のことを話し始めたあの時間だったんです……。

――それは…驚きますね。

はい。あとから振り返ると、父のことをあの時間に思い出していたことが、とても不思議に感じられました。その日はとても寒い日だったのですが、楽屋は暖房をつけていなかったのに、不思議とぽかぽかと暖かくて。理由は分かりませんが、その偶然に少しだけ心が救われた気がしました。きっと、最後に会いに来てくれたのかもしれない、と今も思っています。

父は一代で一級建築士となり、生涯仕事に誇りを持って生きた人でしたので、「無理して地方から帰ってこなくていい」と言ってくれている気がして……。

――なるほど。

ですから、その日は関西に戻らず、翌日と翌々日の別の仕事で撮影を終え、関西公演のリハーサル前日に通夜と葬儀を済ませ、その翌々日の関西公演初日の舞台に立ちました。

――本当に大変な日々だったと思います。

いえ、突然のことではありましたが、誰もがいつか経験する別れですし、自分の中ではしっかり父を見送れたという気持ちもあります。そして何よりも、「仕事が優先や。忙しいんやから、無理して帰ってくるな」と父だったら言うだろうなというのも分かっていたので、不思議と心は落ち着いていました。

葬儀のあとは、家族で父の思い出話をしながら、大好物の蒸したじゃがバターと、ピザとビールをお供えし、団らんできました。舞台が好きだった父も、関西公演をきっと見守ってくれていたと思います。

今年1月、舞台公演中に父を亡くした女優・藤原紀香さん
今年1月、舞台公演中に父を亡くした女優・藤原紀香さん
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