脱バント——「関根イズム」で新たな地平を目指す

野球界において、従来から二つの対照的な考えが、しばしば話題となる。一つは「野球は点を奪い合うスポーツだ」というもの。そしてもう一つは「野球は点を与えない限りは絶対に負けることはない」という考え方だ。

もちろん、池山監督の目指す野球は前者だ。かつて、彼自身が「ブンブン丸」と呼ばれた豪快なスラッガーだったように、今年のスワローズは、「守り勝つ野球」ではなく、「打って、打って、打ちまくる野球」を目指している。

その象徴が「犠牲バントをしない」ということであり、「投手を八番に起用する」という独自の采配スタイルである。それにしても、今年のスワローズは本当にバントをしない。12日までの14試合において、犠牲バントはわずか2個である。

直近のジャイアンツ3連戦を見ても、10日の5回表、一死一塁の場面で打席に入った投手・吉村貢司郎はまったくバントの構えを見せることなく見逃し三振に倒れている。

また、翌11日の4回表、一死二塁の場面でも、やはり山野太一にバントをさせることはなかった。開幕以来、池山は「投手も9人目の野手だ」と何度も口にしている。

徹底的にバントを排し、たとえ確率は低くても、出塁の可能性に賭ける。それが池山監督の目指す攻撃スタイルだ。来年からは、セ・リーグでもDH制度が導入される。

強打のチームを目指すために、送りバントでみすみすアウトを献上するようなことはしたくない。不動のレギュラーを目指している若手のチャンスの芽を潰したくない。

その代わり、徹底的に足を絡めた攻撃を模索している。だからバントはしない。その結果、なすすべもなくダブルプレーに倒れる機会も、これから頻出するだろう。「無策」と批判されるケースも増えるだろう。だからこそ、機動力を重視する。

前述した10日のジャイアンツ戦では一塁走者・増田珠の暴走や、オスナの無謀な走塁によって、チャンスが潰えたシーンもあった。好走と暴走は紙一重だ。

監督が三振に動じれば、選手は萎縮し、そのスイングから本来の輝きが失われる。選手が己を信じ抜くためには、まず監督が誰よりも選手を信じ抜かなければならない。豪快なイメージとは裏腹に、池山が掲げるのは「我慢」を基盤とした育成論なのである。

ただ、「我慢」といっても、変な悲壮感や重苦しい圧迫感は皆無だ。ベンチに控える池山監督の姿が映し出されるとき、彼はいつもニコニコしている。野球を愛し、野球を楽しむ姿が、そこにはある。それもまた、常に微笑みを絶やしていなかった関根監督の姿と重なる。

就任時に池山が掲げた、「対話、元気、笑顔」。これもまた関根イズムの一環なのだ。バントはしない。とにかく走りまくる。池山野球が、従来のスワローズの野球を一新しようとしている。

(写真/shutterstock)
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取材・文/長谷川晶一